イスラエルのネタニヤフ首相が、パレスチナ政治に関する発言をしている。彼はマハムード・アッバース議長が辞任した後に、ムハンマド・ダハラーン氏がパレスチナ自治政府議長に就任することを、希望していると語ったようだ。
ムハンマド・ダハラーン氏とは、かつてガザの治安担当責任者をしていた人物だが、ハマースとPLOとの間で内部対立が起こり,PLO側がガザから全面撤退した。その責任を取らされた形で、ムハンマド・ダハラーン氏はガザの治安責任者のポジションから、外されている。
ムハンマド・ダハラーン氏は英語はもちろんだが、ヘブライ語も堪能でイスラエルの高官たちとは、ヘブライ語でやり取りしていた。そのため、PLOやパレスチナ自治政府の中で、彼はイスラエルのスパイではないか、という疑念を持たれていた。
ムハンマド・ダハラーン氏がガザの治安責任者の地位を失った裏には、彼に対する支持が若者の間で広くあったことに対する、マハムード・アッバース議長の不安によるものでもあろう。
今回ネタニヤフ首相が久しぶりに、ムハンマド・ダハラーン氏の名を取り上げたことには、何か特別の理由があるのではないだろうか。その一つはアメリカ側がイスラエルに対して、強引なまでのパレスチナ自治政府との、和平合意を迫っていることに、あるのかもしれない。
しかし、マハムード・アッバース議長は次々と難題を持ち出し、イスラエルとの和平交渉を進めないようにしている。そのことにいら立ったネタニヤフ首相が、本音を語ってしまったのかもしれない。
今回、ネタニヤフ首相がムハンマド・ダハラーン氏の名を取り上げたことは、マイナスにも働く可能性があろう。述べるまでもなく、パレスチナ人一般の間では、イスラエルやその首相に対する、嫌悪感が根強く浸透しているからだ。そのイスラエルの首相が推薦するというネタニヤフ首相の発言によって、ムハンマド・ダハラーン氏はパレスチナ人の、支持を減らすということになろう。
もちろん、ネタニヤフ首相があくまでも、マハムード・アッバース議長側を揺さぶる意味で発言したのであれば、それなりの効果があったということであろう。マハムード・アッバース議長は言を左右して、和平交渉に真剣に取り組もうとしていない。ドバイに亡命した形になっている、ムハンマド・ダハラーン氏が今後、どう動くのか、あるいは動かないのかが、関心を集めることになろう。
『ネタニヤフ首相をM・ダハラーンPA議長就任希望』
2014年2月 7日