もう4年ほど前の話になるが、トルコの慈善活動家たちがパレスチナのガザに、救援物資を届けようとマーべ・マルマラ号で船出し、公海上でイスラエルの特殊部隊に襲撃される、という事件が起きた。
結果は、9人のトルコ人が射殺されたことに加え、一人の米国籍トルコ人が犠牲になった。イスラエル軍特殊部隊による攻撃が、公海上で行われたこと、トルコの支援船が慈善行為の、途上にあったことなどから、世界はイスラエルの作戦を、蛮行と断定し非難した。
さすがにこうなると、イスラエルもトルコ側の賠償話に、乗らないわけにはいかない。しかし、イスラエルはそれほど甘くはない国だ。結果的に長い時間が経過し、やっとここにきて、4年ぶりで目処がつきそうな状況になってきた。
イスラエル政府は当初、1500万ドルという金額を考えていたようだが、トルコ側が要求する、9人の犠牲者に対する賠償金は、3000万ドルであったことから、やっと2000万ドルという新たな額を提示した。
しかし、まだこの2000万ドルという金額で、最終合意ができたわけではないようだ。事情通の語るところによれば、イスラエルとトルコはほぼ合意しているのだが、それを発表するタイミングが悪いということのようだ。
そのタイミングが悪いという判断は、トルコの3月30日に予定されている、地方選挙にあるようだ。現段階でもし合意が成立し、それが公表されることになれば、反対派は当然のこととして、これを政争の具に利用する、ということが予想される。
もし、賠償金が2000万ドルだとすれば、単純に9人で割ると一人に対する賠償額は222万ドルということになる、邦貨に換算すれば焼く2・2億円ということになる。この金額が妥当であるか否かは、読者の判断に任せよう。
ところでこの賠償金の話はまだ続きがある。それは賠償金が犠牲者遺族に直接渡されるのではなく、いったん政府の『人道基金』という組織に渡され、そこから犠牲者の遺族に渡されるというのだ。
そのような過程があるとなると、犠牲者の遺族に渡される賠償金は、多分よくても半分か、3分の1になるのではないか。政府はこれまでのイスラエルとの交渉に費用がかかったとか、イスラエルとの交渉は難航した、ということをその説明に使うだろう。
もし、3月30日の地方選挙で、与党AKPが敗北し、現在のエルドアン内閣が崩壊するようなことになれば、失礼を顧みずに言わせていただくと、エルドアン首相は賠償金のピンはねは、出来なくなるということだろう。