最近、トルコのメトロポール戦略社会研究所が行った、世論調査の結果がまとめられ、マスコミで発表された。1月14日から21日にかけて、対面取材調査したものであり、1545人の成人を対象にしている。
最初に記されているのは、検事が汚職問題を追及することは正しい、と答えた人の割合が60・5パーセントと報告されている。これに対し、26・5パーセントが反対の立場を示した。
39パーセントの与党(AKP)支持者が、検察の捜査を支持している。野党(CHP)の支持者は、84パーセントが捜査を支持している。野党(MHP)支持者の77パーセントが、検察の捜査を支持している。クルド党(BHP)の支持者の72パーセントが、検察の捜査を支持しているとなっている。
これまでに、汚職事件に絡み、閣僚の子息3人と、その他20人が逮捕されているが、彼等は建設業者に対し、開発禁止区域の開発を出来るように、便宜を図った容疑だ。そして、外人にトルコ国籍を与える便宜を図った容疑、書類の偽造の容疑、輸出への関与、金の密輸などが彼らによって行われた、犯罪容疑者として挙げられている。
もちろん、これらによって逮捕された者たちは、その対価として、賄賂を受け取っていたということだ。その額は日本人の想像をはるかに上回る、高額に達しているようだ。
検察の活動について、妨害ではないと答えた与党(AKP)支持者の割合は60パーセント、野党(CHP)の支持者は87パーセントが検察の活動を評価している。加えて、マスコミの活動については、世論調査に加わった64パーセントの人たちが、自由ではないと評価している。
これまで汚職捜査に厳しく対応していた、100人を超える検察幹部が左遷されているし警察幹部も同様に左遷されている。一説によれば、検察警察双方で、1000人以上のエリートが左遷され、捜査が止められた状態に、なっているということだ。
このことは、他の犯罪の捜査にも影響を与えることになり、社会は危険で不安定になる事が予想されよう。それは敏腕な検察官や警察官が、左遷されているのだから、当然の帰結であろう。
今回の汚職事件をめぐり、48パーセントの人々が、与党(AKP)に対する信頼を失ったと述べている。これに対し、21・9パーセントの人々が、相変わらず与党(AKP)を、信頼していると回答している。
検察や判事は、エルドアン首相が進めようとしている、最高法律委員会(HSYK)の権限強化に関する憲法の改正に、30・9パーセントが賛成しているだけだ。反対に回ったのは52パーセントに上っている。
エルドアン首相は法務省や裁判所よりも、最高法律委員会の権限を拡大し、汚職事件の捜査と裁判を、止めようという意図なのだが、この結果は、エルドアン首相が力で法を捻じ曲げて、汚職を隠ぺいしようとすることが、困難な状況にあるということであろう。
野党(CHP)の支持者80パーセントが、憲法改正に反対しているが、同様に、野党(MHP)支持者の74パーセントが、憲法改正に反対している。
こうしたなか、エルドアン首相の政治手法への支持率にも、大幅な減少が見られ、2011年12月段階では71・1パーセントが支持していたものが、ここにきて2014年1月の段階では、39・4パーセントにまで落ち込んでいる。
全体では、汚職捜査支持は60・5パーセント、汚職捜査は妨害を受けているかについては、57・9パーセントがイエスと答えている。マスコミの報道は自由かという点については、63・8パーセントがノーと答えている。
エルドアン首相はテレビ新聞など、マスコミ媒体については、反対する会社には圧力をかけ、賛成する会社には情報を提供し、財政支援も行っていると言われている。
さてこの世論調査の結果をどう判断するかだが、エルドアン首相に対する信頼が大幅に低下していることは明らかだ。そして、与党(AKP)支持者の間でも、エルドアン首相に対する評価が次第に下がり、現段階では21・9パーセントが、支持しているに過ぎない。
この支持の割合は、エルドアン支持者がほとんどであろうから。与党支持者内部の割合と、見ることができよう。つまり、そこまでエルドアン首相の支持は下がっているということだ。
この状態は今後ますます進み、エルドアン首相に対する支持と、与党(AKP)に対する信頼感は、低下していこう。そうなると、3月に予定されている地方選挙では、大幅な与党(AKP)への支持低下ということに、つながるのではないか。
これでは、エルドアン首相が夢見ていた、アメリカの大統領と同じ、実権を持つ大統領制に憲法を変更し、エルドアン首相が最初の大統領として、その座に就くことは、ほとんど不可能なのではないか。