『ここまで来たかエルドアン体制の民間いじめ』

2014年1月11日

 

 これまで何度か書いてきたが、トルコのエルドアン体制は相当のところまで、自身を追い込んでいるようだ。最初の段階では、軍によるクーデターを恐れるあまり、エジプトのムスリム同胞団選出の、モルシー政権を支持し続けた。

 モルシー政権が世俗派の大反対を受け、ムスリム同胞団支持者との間で、大衝突が起こりそうになったのを、軍が危険視し立ち上がって、モルシー政権を打倒したのだ。それは軍事クーデターとも言えようが、内実は両派の衝突で大量の死傷者が出ることを、防ぐための行動であった。

 このエジプトの動きを見たエルドアン首相は、自国の軍もエルドアン体制打倒に動くのではないかと危惧したために、モルシー大統領は正統だと言い続けたのだ。しかし、そのことはアラブ諸国からは、トルコのエジプトに対する、内政干渉として嫌われ、トルコへの投資が減少することになってしまった。

 幸いにして、トルコでは軍事クーデターは起こっていないが、エルドアン首相がもう一つ恐れたのは、ギュレン氏を代表とするヒズメトの存在だった。ヒズメトの主な資金源は、私立の学校運営によるものだと判断したエルドアン首相は、私学の禁止命令を出した。しかし、この決定は他の私学にもあてはめられることから、トルコ中で大問題となってしまった。

 続いてエルドアン首相が始めたのは、ヒズメト系の銀行(バンク・アシア)に対する中傷工作だった。述べるまでも無く銀行は信用が第一であることから、この中傷工作はバンク・アシアにとって、相当の痛手となっている。

 エルドアン首相がやったのは、バンク・アシアと取引のある大手企業に対し、全資金を引き上げろという脅しだった。そのことに加えて、エルドアン政府は銀行管理機関(BDDK)に対して、バンク・アシアを追い込むことだった。

 こうしたエルドアン首相の工作は、それなりの成果を上げているようだが、BDDKのバンク・アシアに対してやっていることは、法律に触れることでもあるようだ。

 BDDKはバンク・アシアに関する秘密データを、同機関の権限で引き出してマスコミにリークし、バンク・アシアが危険な経営状態にある、とあおらせたのだ。大手の企業の出資金についても、BDDKはデータを引き出しており、エルドアン首相はそのデータを下に、出資者に対しバンク・アシアから資金を引き出すように、指示したということのようだ。

 ここまで来ると、まさにエルドアン首相とヒズメト・グループとの、死闘という感じがする。この死闘で、いったんはエルドアン首相が勝つとしても、選挙では大敗を免れないのではないか。