サウジアラビアのペルシャ湾に面した地域の一部に、アルカティーフとアワミーヤいう地名の地域がある。この住民はほとんどがイスラム教のシーア派であり、サウジアラビアの王家はスンニー派だ。このため、アルカティーフのシーア派住民は、何かにつけて差別され続けてきていた。
当然にことながら、アルカティーフの住民は政府に対等な処遇を求めて、デモを繰り返してきている。しかし、サウジアラビア政府は全く、シーア派住民の要望を聞き入れてきていない。
デモを扇動するシーア派の人士を、逮捕投獄し、その後裁判にもかけないままに放置している。現在の段階で投獄されているシーア派住民の数は、4万人にも上るということだ。
シーア派住民はこれまで、『政治犯の釈放』、『議会への参加』、『表現の自由』、『差別の撤廃』などを求めてきていた。
これまでシーア派住民の要求は、至って穏健な形で示され、平和的なデモにとどまり、諸権利の要求にとどまっていた。しかし、最近になって少しずつその要求の内容と、要求の仕方が変化しつつあるようだ。
デモ隊のなかに、諸権利の要求に加え、『サウジアラビアの王制打倒』を叫ぶ者が、現れ始めているのだ。そうした変化は2011年11月に起こった、デモ隊に対する警察の対応が厳しかったことに、起因しているようだ。
このデモでは警察側の発砲などで、デモ参加者の5人が殺害され、多数が負傷しているということのようだ。述べるまでもないが、サウジアラビア国内ではあらゆる種類のデモが禁止されているし、集会の自由も認められていない。
こうした流れのなかで、新たな動きが出てきた。それはデモ隊のなかから、警察に対して発砲する者が出てきたのだ。これはシーア派住民のサウジアラビア政府に対する抗議を、エスカレートさせるものであり、今後は武器を使った抵抗運動が、拡大していく可能性が高い、ということであろうか。
サウジアラビアの隣国(サウジアラビア政府は自国領と認識しているのだろう)のバハレーンでも、先に報告したように、政府に対する抗議行動は平和的デモから、武力闘争に変化する兆しが見え始めている。
これはイラン政府による、サウジアラビア政府に対する揺さぶりであろうか。あるいは揺さぶりだけではない、もう一歩進んだ動きなのであろうか。 注意して追跡を続ける必要があるようだ。