エジプトは2011年のアラブの春革命以来、ムスリム同胞団のモルシー政権が出来たが、経済は悪化の一途をたどっていた。その最大の原因はムスリム同胞団が湾岸諸国に、危険な組織と認識されていたことであろう。
湾岸諸国のなかの、サウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦はモルシー政権への経済援助を、拒否続けてきていた。これらの国々では、ムスリム同胞団のメンバーが逮捕され、投獄されてもいる。
もう一つの経済不信の原因は、ムスリム同胞団が国家運営の、経験を持たなかったことによろう。加えて、ムスリム同胞団政権は官僚の活用に失敗し、官僚はサボタージュを決め込んでいた。これでは国家の運営は経済のみならず、あらゆる分野でうまく機能しないのは、当たり前であろう。
しかし、昨年7月3日の軍の出動と、モルシー政権打倒以来、湾岸諸国は喜んでエジプトの経済を、支援する動きに出ている。サウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦が、エジプトに対し同時期に、資金援助を申し出、その合計金額は、120億ドルにも達した。
エジプト産業への一般的な投資も、これらの国々は申し出ている。なかでも、エジプトの基幹産業である、観光産業への支援も申し出ている。結果的に、エジプト国内では、将来に対するかすかな希望が、国民の間で持たれるようになった。
こうしたなかで、フィッチ社がエジプト経済に対する、評価を発表した。エジプトの財務省が発表した、経済状態に対する評価はBマイナスだったが 、フィッチ社がつけた評価はB だった。
フィッチ社がエジプト政府よりも、高い評価をつけた理由は、エジプトが政治的に安定してきていることに加え、外国からの外貨援助を受けられ、財政支援も受けられるようになっているからだ。
フィッチ社が懸念する点は、エジプト政府の債務が増大している点と、大幅な赤字予算にある。しかし、フィッチ社だけではなく、スタンダードアンドプアーズ社も、フィッチ社同様に、エジプトの経済見通しに、希望が持てると判断している。
こうした判断が、国際的な経済評価企業によって出されることは、エジプトへの投資を煽ることになり、エジプトの経済は改善していく可能性が高くなろう。エジプトには観光資源ばかりではなく、地下資源があり、スエズ運河があり、人材も豊富だ。革命後の経済再建は、軌道にさえ乗ればそう困難ではあるまい。