新年早々出てきた最初の危険な兆候を伝えるニュースはイラン発だった。イランは昨年11月に、レバノンの首都ベイルート市で起こった爆弾テロ事件を、サウジアラビアの犯行と断定したのだ。
このテロ事件はベイルート市の南部にある、イラン大使館に対する爆弾テロ事件で、大使館の外側で二つの爆発が起こり、6人のイラン人を含む25人が死亡し、150人が負傷するというものだった。
この事件は後に、レバノン警察が調査を進め、アブドッラー・アッザーム・グループによる反抗と断定した。このアブドッラー・アッザーム・グループはアルカーイダと連結している組織だ。
その組織のマジェド・アルマジェドという名の、サウジの司令官が逮捕されたが、彼が事件の主犯とみなされている。つまり、爆弾テロ事件はサウジアラビアによる犯行だった、ということになる。
アルカーイダの下部組織が犯行を行ったということは、アルカーイダ・グループについては、サウジアラビアのバンダル情報長官が、動かしている組織だという情報もあり、いよいよサウジアラビアとイランとの関係は、緊張を高めていくのではないか。
イランはこの大規模な犠牲の出たテロ事件で、何らかの報復をしないわけにはいくまい。このテロ事件ばかりではなく、イランはサウジアラビアンに対し、敵意をむき出しにしてきている。
それは、ジュネーブでのイランの核問題をめぐる会議で、欧米諸国がイランとの雪解けムードに、入ってきていることに起因する。なかでも、欧州諸国はイランとの関係改善を、急ぎ始めているのだ。
このことは、サウジアラビアから見れば、イランが核兵器を持つに至る、危険なものということになり、サウジアラビアはイランと欧米との交渉を、何とか阻止したいと考えている、とイランは判断しているようだ。
サウジアラビアがイランと欧米との関係回復に、不安を抱いているのは、湾岸諸国、なかでもサウジアラビアの社会・政治問題、そのなかでも人権問題に対する厳しい眼差しが、欧米諸国からサウジアラビアに、向けられるようになってきたためだ。
サウジアラビアはイランを挑発することによって、欧米の湾岸諸国なかでもサウジアラビアに向けられる、厳しい視線をかわそうということだというのだ。
サウジアラビアとイランとが軍事的に緊張状態にはいれば、欧米諸国はサウジアラビアの人権問題については、関心を払わなくなるからであろうか。