『3月選挙を控えトルコ非難合戦激化』

2014年1月28日

 

 今年の3月にはトルコで地方選挙が行われる。それに先立ち種々の動きが活発化している。昨年12月に始まった政府閣僚とその家族の金銭的スキャンダル問題が公になり、エルドアン首相はその火消しに躍起になっている。

 まず、3月の予定されている地方選挙で、イスタンブール市長に立つ候補予定のサルギュル氏が彼に対する、誹謗キャンペーンをエルドアン政府が始めた、と非難した。

述べるまでもなく、トルコ最大の都市であるイスタンブールの市長に、反エルドアンのCHPの人物が選出されれば、トルコのあらゆる活動が、分裂状態になるであろう。

エルドアン首相に関してはウルラの別荘56棟を、業者から賄賂として受け取った、と非難してもいる。エルドアン首相の子息ビラールの賄賂問題は、検察や警察レベルで既に調査済みなのだが、エルドアン首相が検察や警察の幹部を左遷させることで、捜査から逮捕への課程を、麻痺させているのだ。

エルドアン首相にとって不都合なのは、トルコ・リラが国内問題の拡大に伴い下落し、一時は1ドルに対して18トルコ・リラであったものが、2.3リラまで下がり、近い将来2・4トルコ・リラまで下がるだろう、と経済界の人たちは予測している。

このことは、輸出はいいとしても、輸入には大きな痛手となる。トルコはエネルギー資源を持たない国である事から、その輸入額は莫大なものになっており、トルコ・リラの下落はダブル・パンチになっている。

トルコの中央銀行はドルを市場に放出することによってトルコ・リラの価値を維持しようと思っているがうまくいかないのではないか。

そもそもの今回のトルコ国内混乱は、エルドアン首相がフェイトッラー・ギュレン氏が主導する、ヒズメトと呼ばれる組織との衝突で始まっている。ギュレン氏のトルコ社会での影響力が、極めて大きい事に恐れをなしたエルドアン首相が、彼らの経営する私学を閉鎖する動きに出たからだ。

最近になって、アルンチ副首相は妥協案を出すべく、3月の選挙前にこの問題を解決したい、と言い出している。しかし、ゲジ公園問題でアルンチ副首相やギュル大統領が提案した妥協案を、エルドアン首相は簡単に否定したといういきさつがあり、そう簡単ではあるまい。この問題は政治取引よりも、エルドアン首相のメンツの問題になっているからだ。

最近では、エルドアン首相の圧力が強化されているにもかかわらず、次第に法曹界が反エルドアンに動き出している。エルドアン首相と何人かの閣僚のスキャンダルを、法廷に持ち出すと独立弁護士団が発言している。

  ギュレン氏はトルコのインテリも一般人も、既に今回の汚職問題を良く知っており、スキャンダルを隠すことができないばかりか、誰もエルドアン首相を支援しないと語っている。したがって、結論はエルドアン首相にとって、極めて厳しいものになるということだ。

 アメリカもエルドアン首相がイラン訪問を発表すると、イランとのビジネス関係に警告を発している。そのことはこれまでエルドアン首相が果たしてきた、イランのためのマネー・ロンダリングをアメリカは知っており、それを阻止することと、エルドアン首相の汚職の証拠を、隠滅するためのものだ、と判断しているのであろう。