『エジプトの来年を占う』

2013年12月28日

 

 73日、エジプトではムスリム同胞団の自由公正党政権が、世俗派の大規模デモに続く、軍の蜂起によって打倒された。以来、エジプトはムスリム同胞団側の抵抗と、それによるモルシー政権の復活を狙う、デモとテロが続いている。

 デモは7月から今日まで続いているし、テロも各地で起こっている。なかでも、テロは爆弾を使ったものが多く、大規模な被害を出している。その対象は公共建造物が多く、警察署などもテロの対象になっている。

 こうしてみると、エジプトは今後ますます混乱の度を強め、来年になればもっとひどい状況に、なるのではないかと考え勝ちだ。さて、実際はそうなるのだろうか。私は全く逆の予想をしている。

 ムスリム同胞団による抵抗運動は、今でも確かに続いてはいるが、臨時政府がムスリム同胞団の組織や個人の、資産を凍結しているために、大衆動員の費用が、出せなくなっている。

 このため、ムスリム同胞団によるデモの回数は減少し、しかも規模も小さくなっているようだ。そのことは、これまでのムスリム同胞団によるデモは、実はムスリム同胞団のメンバーだけではなく、小銭を欲しがるノンポリの参加が多かった、とも言えるのではないのか。

 爆弾テロやデモについて言えば、カイロ大学やアインシャムス大学、そしてアスハル大学でのものが話題になっている。このことはムスリム同胞団だけではなく、世俗派の何でも抵抗したい、反対したい若者が多いということではないだろうか。

 加えて、爆弾テロが一般の人たちを運ぶ、公共バスに対しても行われているが、これでは大衆のムスリム同胞団支持は減少し、逆にムスリム同胞団の支持を減らすことになり、軍隊がエジプト国内の治安を、取り締まってくれることを、望むようになろう。

 そうなれば、2011年の革命当初の目的とは全く異なる、軍人出身者による統治が、再度繰り返されることになるのではないか。つまり、シーシ国防大臣の大統領就任を望む人たちが、エジプト国内で増えるということだ。つまり、ムスリム同胞団が今やっていることは、全く大衆の意向を無視したものであり、計画性の無いものだ、と言えるのではないのか。

 他方、臨時政府側は着々と、国内安定化に向けた作業を進めている。新憲法草案が出来、11415日には国民の賛否を問う、国民投票が行われ、その後には国会議員選挙が予定されており、次いで大統領選挙が行われる予定だ。

 こうなると、一日も早い国内安定と経済再建を願う大衆は、臨時政府を支持する者がほとんどになるのではないか。この流れを壊そうとする、ムスリム同胞団の活動は国民に嫌われ、国民大衆がムスリム同胞団を、監視するような行動を採るかもしれない。どうやらムスリム同胞団は、今回の戦いに敗れたようだ。

そうだとすれば、今後も単発的な爆弾テロは起こるものの、ムスリム同胞団の活動は大衆の支持を失って行き、エジプトは安定化に向かうのではないか。そうあって欲しい。