末期症状とはこういうことを言うのであろうか。最近になって、急激にトルコ権力内部での対立が、目立ち始めている。それは責任のなすりつけ合いであり、権限の主張でありといった具合だ。
まず、トルコの3閣僚が辞任することになった。経済大臣のザーフェル・チャーラヤン氏、そして内務大臣のムアンメル・ギュラール氏だ、次いで辞任するのが環境都市開発大臣のエルドアン・バイラクタル氏だ。
最初の二人は渋々ではあるが、何も言わずに大臣職を辞任したが、エルドアン・バイラクタル環境都市開発大臣はそうではなかった。自分が辞任することはいいが、そもそも建設計画はエルドアン首相の、管轄権限下にあったのだから、自分が辞任するならエルドアン首相も、辞任すべきだと語ったのだ。
今回の一連の汚職問題で、初めてエルドアン首相の辞任が、閣僚の口を通じて語られたのだ。そのことは汚職問題を一歩前に、進めたということであろう。
そもそもトルコ国内の不安定化は、エルドアン首相のイスタンブール市内にあるゲジ公園を潰して、巨大なショッピング・モールを建設する、という話から始まったものだ。
このショッピング・モールの建設では、エルドアン首相の妻が関与していたという、噂が流れていたし、彼の義理の息子も絡んでいたのではないか、と言われている。我々部外者には事の真相はわからないが、こうした噂が出ること自体、エルドアン首相にとっては極めて、不都合なことであったろう。
そうした噂を裏付けるような発言が、エルドアン・バイラクタル環境都市開発大臣によって、語られたということだ。同大臣は『そもそも開発関連事業は、エルドアン首相の権限下にあったのだから、今回の一連の汚職事件では、エルドアン首相にも責任がある、したがって彼は辞任すべきだ。』というものであった。
もう一つのいざこざは、検察側と警察側の対立だ。検察側はイスタンブール警察に対し、30人ほどを逮捕するよう指示したが、警察側はこれを拒否している、その理由は、多数の警察幹部が左遷あるいは首になっており、その後、警察内部が再整理されていないために、動きが取れないというものだった。
これを検察側と警察側の対立と受け止めるか、あるいは双方間の出来レースと受け止めるかは、今の段階では判断しかねる。
いずれにしろ、検察側と警察側の意見の相違が出ていることは、政府が何らかの指示を出した場合に、動きが鈍くなるということであろう。沈む船の中が混乱し、いいアイデアが出てこなくなるのは、当然ことかもしれない。