『イランが首都移転検討』

2013年12月25日

 

 中東のニュースと言えば、最近では政変や内戦と言った、血なまぐさいものが多いが、イランから伝わってきたニュースは、何となく胸をときめかせるものがある。それは首都の移転話だからだ。

 現在のテヘランが首都になったのは、ペルシャの歴史の中では比較的最近であり、それ以前には幾つかの首都が、交代でその役割を果たしていた。それがテヘランになり、その後テヘランの人口が増大し、1200万人にも及びテヘランは大混雑する街に変貌した。

 加えて、最近のテヘランは、大気の汚染がひどくなっている。中国ほどではないが、やはりそれは大きな社会問題となっているようだ。また、テヘランでは地震が頻発してもいる。大型の地震が起これば、街は一瞬にして瓦礫の山と化す、危険性があるのだ。それだけ軟弱な建造物や、古い建造物がテヘランには多いということだ。

 さて、このテヘランから首都を、他の地域に移転させる提案に、イランの国会議員たちは、どのような反応を示しているのだろうか。最近議会で討議された結果は、議員総数が290人のうち、214人が討議に参加し、首都の移転に賛成した議員の数は、110人だったと報告されている。

 イランの東部では、大型地震が起こっていることから、多分首都が移転される場合は、中央部から西部の地域になるだろう。そのことによって、少しでも地震の被害を軽減させる、と考えるのは当然の配慮であろう。

 しかし、そうは言ってみても、首都の移転には移転の費用と、新首都の整備費用がかかり、それは膨大な予算を組まなければならないだろう。テヘラン住民の間にも、空気汚染や混雑に対する不満はありながらも、首都を移転して欲しくないという感情もあろう。

 結果的に、首都を移転させるか否かを決められるのは、イランの最高指導者であるハメネイ師の決断ということになろう。もし、ハメネイ師がゴーと言えば、誰が反対してもそれは実行され、その反対であれば誰が望んでも、移転話は無理ということになろう。

 こうした大規模な計画の是非をめぐる話の場合、絶大な権力者が存在するということは、きわめて便利であろう。彼の一言が全てを決定出来、大衆は文句を言える筋合いには無いからだ。

  あるいは、ハメネイ師がイランにもたらせる、最大の貢献は首都の移転に対する決断であり、それは首都移転計画への、ゴー・サインなのかもしれない。一部にはこの計画は実現性に乏しいという人士もいるが、ハメネイ師を持ってすればは無理ではあるまい。夢のある話ではないか。