イスラエルの最大都市テルアビブでバスの乗客を狙った爆弾テロが、12月22日の日曜日に起こった。バスの後部座席に黒い大型のバッグが放置されていたため不審に思い、乗客を誘導し下車させた後間も無く爆弾が破裂したようだ。
幸い死傷者は出なかったことは、まさに幸運としか言いようがなかろう。爆弾はこれまでバス爆破に使われたような、大型ではなかったことから、この程度で済んだのであろうが、そうでなければ、下車した後でも、死傷者が出た可能性があろう。
以前に起こった同種のテロでは、バス全体がバラバラになっていた。今回の爆弾テロに、どのような種類の爆発物が使われたのかについて、イスラエル警察はコメントを控えているが、手控えたテロであり、警告が主な目的だったような気もする。
しかし、もし日本で同じテロが起こっていたら、きっと死傷者が出ていたろう。それだけイスラエル国民は、常時テロに対する対応を訓練されているということであろう。そのため乗客の行動が敏速だったということであろう。まさに戦時下にいるような毎日を、イスラエル国民は過ごしているのだ。気の毒としか言いようが無い。
バスには12人の乗客がいたが、事件後どの組織からも、犯行声明は出ていない。今回の爆弾テロについて、パレスチナのハマースとイスラムジハード組織は、歓迎の意を表している。
今回の犯行が起こる前には、ヨルダン川西岸地区でイスラエル入植者や警察による、パレスチナ人に対する攻撃があり、何度となく衝突を繰り返していた。最近になってそのような衝突が繰り返されるなかで、19人のパレスチナ人が死亡し、イスラエル人も4人が死亡している。
パレスチナ人とイスラエル人の衝突が起こる原因は、第一に和平交渉が全く進んでいないし、何の成果も出していないことから来る、パレスチナ人のフラストレーションの拡大であろう。第二には、イスラエル人によるヨルダン川西岸地区への入植が、政府によって認められ保護されていることにあろう。
加えて、ガザ地区に対する容赦の無い、イスラエル軍による攻撃であろう。最近、パレスチナ問題に対する関心は、アラブ諸国のなかでも世界全体でも、低下の傾向にある。ガザ地区がエジプトとイスラエルによって閉鎖されており、生活物資にすら困窮する状態にあるのだ。
ガザ地区のハマースやイスラムジハード組織が、爆弾テロを歓迎する声明を出した気持ちは、分からないではない。そして、パレスチナ問題を再度世界にアピールすることも、今回のバス爆破テロの目的であったのではないか。
もちろん、だからといってパレスチナ側に無差別テロをする、正当な権利があるという判断は馬鹿げていよう。国連(欧米)が勝手に決めたパレスチナの分割とイスラエルの建国、そのイスラエル国家の、ユダヤ人に対するゲットー化以来、トラブルが無辜の民を犠牲にしてきているのだ。それはイスラエル国民であり、パレスチナ人なのだ。いわばイスラエル国民もパレスチナ人も、お互いに国際政治の犠牲者なのだ。イスラエル国民とパレスチナ人双方は、自分の側の権利の主張の前に、国際政治の犠牲者同士である、という認識の上に立って、相手を思いやる気持ちを、持って欲しいものだ。