『トルコは政治的内戦の時代に入った』

2013年12月22日

 

 エルドアン首相による、多くの傲慢な政治の進め方が、トルコ国内外で問題を起こしたのが、2013年の特徴だった。このエルドアン首相の傲慢な政治の進め方については、トルコ国民はもとより、インテリ層にも不満が募っていた。

 エルドアン首相が不安を抱く、トルコ軍と宗教慈善団体であるヒズメトに対して、どのような対応を採るのかが、一つの焦点になっていた。エルドアン首相はトルコ軍のクーデターを恐れることから、エジプト軍の蜂起によって大統領の座を追われた、モルシー前大統領を正統と主張し続けてきている。

 しかし、それは今となっては何も意味もなかろう。既にエジプトは政治的に、新たな段階に入っており、来年には正規の大統領選挙が、実施されることになっているし、それに先駆けて新憲法への国民投票も、1月半ばに予定されている。

 エルドアン首相が恐れる、もう一つのヒズメトについては、この組織だけではなく、全国に展開している私立予備校の、全面閉鎖を宣言した。しかし、これは既にトルコの国内で、一大産業となっているし、相手はヒズメトだけではないことから、ごうごうたる非難が国内で起こっている。

 エルドアン首相はヒズメトに対する攻撃として、ヒズメトの運営する学校を閉鎖させることで、資金的窮地に立たせるつもりだったのであろう。しかし、それは逆効果を生み、最近になって防戦に追われている。マスコミがエルドアン首相と彼の閣僚、そして閣僚の子息たちに関係する、各種のスキャンダルを暴露し始めたからだ。

 このことと前後して、警察や検察が現政権に関わる要人たちと、家族のスキャンダルを調査し始め、何人かの閣僚と数十人の彼らの子息たちが、金銭的スキャンダルで逮捕され、投獄されるに至っている。

 エルドアン首相はこの問題で、検察や警察の幹部の一部を首にしたが、そのことは、ますますエルドアン首相の立場を有利にするのではなく、逆に追い込んでいるのではないか。

 ヒズメトに対しては、現在トルコ国内で起こっている、あらゆる問題は外国の陰謀だといい、金銭的スキャンダルはヒズメトによるものだ、とまで言い放った。さすがにこれまで沈黙を続けていた、ヒズメトのリーダーもついに、堪忍袋の緒が切れたようだ。

 1220日、ヒズメトのリーダーであるギュレン氏は、エルドアン首相と彼の仲間たちに対する、激しい非難を行ったのだ。『彼らの家は燃やされ、彼らの政党は分裂する』とまで語ったのだ。

 このギュレン氏の演説が、今後のトルコを決めるのではないか。エルドアン首相に不満を抱く官僚警察検察は、閣僚とその家族に対する捜査を、今後強めていくものと思われるし、マスコミの非難も強まっていこう。そのことに加え、トルコ国民による全国規模の、反エルドアンデモも起こる可能性があろう。

 他方、エルドアン首相は反政府派に対する弾圧を、強めていくのではないか。イランはいままで、エルドアン首相が国際的なイランに対する、経済制裁破りをしていたことから、エルドアン首相を支持しているようだが、墓穴を掘ったのではないかと思われる。

一説によると、イラン政府は『エルドアン首相には20パーセントのコミッションを取る権利がる。』と言ったというのだ。つまり、現在エルドアン首相はイランとの取引の中で、20パーセントのコミッションを取っていることを、イランが認めたということであろう。

最近になって、エルドアン首相はアメリカやヨーロッパの外交官にも、噛み付いているが、その結果は徹底的に彼の身辺が、欧米諸国によって調べ上げられる、ということであろう。

来年の3月には、トルコ国内で地方選挙が行われる予定だが、その結果はエルドアン首相と彼の政党(AKP が大敗するということであろう。もちろん、その前にエルドアン首相は、トルコの政治の舞台から消えているかもしれない。

エルドアン首相は来年の1月始めに来日する予定だが、日本政府は彼をどう迎えるのか。日本政府はスキャンダルにまみれた人物を、歓迎しなければならないのだろうが、そこが外交の舞台のつらいところだ。