来月1月の半ばには、新憲法の是非を問う、国民投票が行われることが決まった。それに続いて、国会議員選挙が予定されており、その後には大統領選挙が予定されている。つまりエジプトの将来への、政治日程は決まったのだ。
大半のエジプト国民は、この政治日程に従って政治が進められ、一日も早い、国内の安定が実現することを、望んでいるだろう。またその新憲法に賛成する人たちの多くは、シーシ国防大臣が大統領に就任することを願っている。
混沌としたエジプトの国内情勢を、安定化に導いていくためには、物理的な力が必要であり、その力は軍にしかないということなのであろう。そうである以上、シーシ大統領待望論は当然の選択、ということになろう。
しかし、それはムスリム同胞団にとっては、受け入れ難いことだ。シーシ国防大臣が大統領に就任し、軍主導の政治が行われるようになれば、もう後戻りは出来なくなり、ムスリム同胞団はその後、長期間に渡って弾圧の対象となり、メンバーは地下にもぐるか、国外に逃亡するしかなくなろう。
現段階では、多くのムスリム同胞団の幹部や、メンバーが逮捕され投獄されている。7月3日に起こった軍の蜂起以来、抵抗するなかでこれまでに、死んでいったムスリム同胞団のメンバーも、少なくなくない。
そこで、ムスリム同胞団が考えた新たな抵抗手段は、女性の活用だった。しかも20歳未満の若い女性を前面に立てて、軍や治安警察と戦わせるという手法だ。これでは軍も治安警察も、手荒なことはやりにくい。実際に21人の若いムスリム同胞団メンバーの、女性を逮捕したところ、内外から非難され、ついには釈放せざるを得なかった。
女子高生や大学生の彼女らは、大学の授業を受けるよりも、エジプトの自由を守るほうが重要だ、と息巻いている。報道によれば、治安警察が使う催涙弾に対応し、彼女らはガスマスクを用意し、へジャーブの上から着けているということだ。
今後も若い女性による抵抗運動が続くだろうが、エジプトの軍や治安警察はどう対応して行くのだろうか。ただ、現段階で言えることは、デモの規模は大分小さくなり,一般大衆を巻き込むところまでは、発展していない。
しかし、若い女性のデモ隊の中から、死者が出れば話は別で、一気に軍や警察に対する非難の声が上がろう。犠牲者が美人であればなおさらそうであろう。大衆運動は抵抗を盛り上げるために、意図的に犠牲者を生み出す場合がある。
もし今後、女性デモ隊のなかから死者が出た場合は、軍や警察によるよりも、ムスリム同胞団側による殺人と判断することも、必要であろう。