単なる偶然かもしれないが、最近になって、カダフィ派の要人に関する情報が、伝えられるようになった。それは他愛もない内容なのだが、それなりにリビアの現体制にとっては、少なからぬショックなのであろう。
第一に言えることは、カダフィ派の人士がいまだに健在であり、その一部は自由な立場にいるということだ。そのことは今後、カダフィ派の人たちがしかるべき動きを始める、という期待に繋がろう。
カダフィ派の動きを伝えるニュースがあるだけで、リビアの現状に不満を抱くリビア国民の間から、カダフィ体制の復活を願う者が出てくるからだ。カダフィ大佐の統治時代には、確かに政治的自由は無かったかもしれないが、今のように食料の入手や、ガソリンの入手、教育、医療面での問題に、直面することはなかった。
カダフィ大佐の統治下では、最低生活ラインは、保障されていたのだ。それにもまして、社会的安全が保障されていたということであろう。今のリビアは外出時に、突然爆弾の爆破によって死傷するということが、十分にありうるし、政府の要人たちも人質に取られたり、暗殺される危険が、満ち溢れているのだ。
そのような中で、サイフルイスラーム氏の裁判が行われた。行われた場所は、彼が幽閉されているリビア南西部の街、ズインタン市だった。去る7月には、国際刑事裁判所のスタッフがズインタン市を訪れ、サイフルイスラーム氏に面会しているし、その前後に裁判が行われたようだ。
裁判の状況はと言えば、檻の中に入れられたサイフルイスラーム氏に、裁判官が質問するが、サイフルイスラーム氏はまともに、返答しなかったということだ。結果的に15分ほどで閉会になったと伝えられている。
それはサイフルイスラーム氏がいま、最高の条件の下で監禁されている、ということを意味しているのではないのか。日本風の表現をすれば、腫れ物にでも触るような対応ということであろう。
他方、カイロではカダフィダム氏が釈放され、エジプトのテレビに出演している。ここでも込み入ったやりとりは無かったようだが、彼がテレビに出演するということだけで、リビア国内に影響を与えることは間違いない。
先にも述べたように、リビアの現状に不満を抱く人たちにとっては、サイフルイスラーム氏の裁判の情報や、カダフィダム氏のテレビ出演は、彼らの期待を膨らませることになるだろう。
国際刑事裁判所の影響は、多分にサイフルイスラーム氏の刑を軽くするか、場合によっては無罪としよう。その後に何が始まるのかということだ。