イスラエルの元参謀長ダン・ハルツ氏が、本音をイスラエルのマアリブ紙に語っている。彼によればわけのわからないイスラム原理主義者たちがシリアを支配するよりも、バッシャール・アサド大統領の方がましだというのだ。
当然であろう。バッシャール・アサド大統領は父親のハーフェズアサドの代で、
イスラエルとの戦争に完敗している。以来、イスラエルを非難はするものの、
シリアには一 戦を構えるつもりはない、という立場を堅持してきている。
バッシャール・アサド大統領は最後に残ったアラブ統一と、反イスラエルの勇者という立場を冠してきたが、それは表面だけの話であり、イスラエルに対する戦闘意欲は、微塵もなかったというのが 事実だ。
イスラエルはそれを百も承知だったのだが、それでは戦争に関わる援助で成り立っている、イスラエルの経済が持たない。シリアがイスラエルにとって、危険な国家であり、反西側のセンターだといった宣伝をしてきた。
バッシャール・アサド大統領はイラクのサダム・フセイン大統領と同じ、危険な兵器を開発し、それを使用する極悪非道の人物だ、というイメージをイスラエルは広げもしてきた。
そのイスラエルの宣伝に乗り、アメリカはシリア敵視を強め、シリアに対する軍事攻撃の一歩手前までいったのだ。何とかロシアが仲裁に入り、アメリカはシリアに対する軍事攻撃を思いとどまっている。
しかし、だからと言ってアメリカはシリアに対し、何もしなかったわけではない。サウジアラビアやカタール、トルコなどを使って、反シリア政府側を支援し、アメリカ自からも支援してきた。結果は何百万人という難民と、何十万人という死傷者を排出することとなった。
ところが最近になって、欧米諸国は反シリア側に対する支援をやめる、と言い出したのだ。その理由はいろいろ挙げられているが、つまるところは金を出したくないということと、これ以上反体制側を支援しても、シリアに理想的な体制が誕生するわけでもないから、放置しようということではないのか。
幸いなことに、イスラエルの元参謀長が自ら『イスラエルにとって都合のいい体制は、反シリア政府のイスラム原理主義者たちによるものではなく、現バッシャール・アサド体制だ。』と語ってくれた。
つまり、シリア問題は振り出しに戻ったということだ。それに至るまでには膨大な破壊と、犠牲が生まれたのだが、誰がそれを補うというのだろうか。気の毒なのはシリアの国民であり、迷惑なのはシリアの周辺諸国ということになる。