『紅海と死海を繋ぐ夢のプロジェクトなのだが』

2013年12月10日

 

 だいぶ前から、死海の水量が干上がっているという事が、問題になってきていた、毎年1メートル程度、死海の水位が下がっているというのだから、簡単な問題ではない。そして、このまま放置すれば2050年には、死海が干上がって、無くなってしまうというのだ。

  そこで考えられたのが、死海の海抜が極めて低いことから、これを利用しようという計画だ。確か死海の水位はマイナス400メートル程度だったはずだ。そこに向けて地中海から水を引き、落差を利用して電力を起こす。死海はその水で干ばつから免れるというものだった。

 今度検討されてイスラエルとパレスチナ自治政府、そしてヨルダンとの間で合意されたのは、地中海ではなく水源を紅海にするという考えだ。この方が海水を引く距離は、200キロメートル程度と相当短くなり、経費は安く上がるということだ。

 この計画が実施されるのに必要な経費は、2・5億ドルから4億ドル程度ということなので、巨額なプロジェクトとはいえまい。しかも、この計画が進められれば、海水淡水化装置を使い、紅海の海水が真水に変えられ、イスラエルとパレスチナ自治政府、そしてヨルダンの国民が利用できるようになるのだ。

その淡水化される水量は、4800万~1億立方メートルと、見積もられている。

しかも淡水化の後には、紅海から死海への落差を利用した、発電が行われる。もちろん電力もこれらの国々で、シェアーされることになる。

 死海が滅亡から守られ、電力が開発され、飲料農業用水が確保できるこの計画は、虹の計画とでも名付けたくなるのだが、どうもそう手放しには喜べない部分もあるようだ。

 第一には、死海の海水と泥は多くの塩分とミネラルを含んでいるが、新たな海水が加わることで変質することだ。そしていま観光が盛んであり、死海の泥を使った製品や健康を目的とする施設に、影響が出るのではないかということだ。

  もう一つの問題は紅海から海水を引いて死海に運ぶことで、シナイ半島の紅海側のラース・ムハンマドやシャルム・エルシェイクで各種の影響が、出るだろうということだ。

  エジプト政府の推定では、この計画が進められれば、海水の温度に変化が起き、紅海の魚やその他の生物の生命が、保証できなくなるということだ。そのことによってエジプトが被る被害額は、毎年100億ドルにも達するだろう、ということだ。どうやら紅海から死海に水を運ぶ虹の計画は、エジプトを参加させなければ、進まなくなりそうだ。