『湾岸諸国の不安が統一案を生むが』

2013年12月 9日

 

 イランとアメリカとの関係が、改善の兆しを見せているなかで、湾岸諸国はイランに対する脅威を抱き始めている。これまでも関係が良くなかった、湾岸諸国とイランとの関係が、ここにきてアメリカという後ろ盾に、期待出来なくなった感があるからであろう。

 なかでも、サウジアラビアはイランに対し、これまで挑発的な立場をとってきていたことから、不安はなおさらであろう。サウジアラビアが庇護しているバハレーンでは、相も変わらず反政府デモが続いており、バハレーン政府は手の打ちようが無い状態にある。

 サウジアラビアがいま一番恐れているのは、イランが湾岸諸国に対して、直接攻撃を加えてくるということではなく、アラブの組織や国家を支援して、湾岸諸国に対し、敵対行動をとってくる、ということではないのか。

 たとえば先日、イエメンとサウジアラビアの国境で、イエメンの部族ミリシアとサウジアラビア軍が、衝突したようなケースだ。

 サウジアラビアはこのイエメンの部族が、イランによって支援されていると考えており、この武力衝突が起こったのは、イランによるサウジアラビアに対する、間接攻撃だと受け止めているようだ。

 サウジアラビアばかりではない。バハレーンの場合はシーア派国民に対する、秘密裏の支援による、体制転覆が考えられるし、アラブ首長国連邦の場合は、領土問題(大小トンブ島とアブムーサ島)が横たわっている。最近、イラン政府はアラブ首長国連邦に対し、交渉で領土問題を解決しよう、と言い出しているが、それはイラン領土であることを正式に認めさせる、という意味だとアラブ首長国連邦は受け止めているようだ。

 こうした雰囲気のなかで、不安を解消するために、湾岸諸国を統一してしまおう、という案が出ている。束になってかかれば、イランも軽々には手を出せなくなる、という判断であろう。

 しかし、これは現在よりも危険な関係をイランと湾岸諸国との間に生み出してしまう、と考える国もある。それはオマーン政府であり、オマーンのユーセフ・アラウイ外務担当大臣は『湾岸諸国が統一することに反対はしないが、我が国はそれに加盟するつもりはない。』 とはっきりと拒否の姿勢を示している。

 近くクウエイトで湾岸諸国首脳会議が開催され、湾岸諸国の統一問題が主要テーマになる予定だが、オマーンのユーセフ・アラウイ外務担当大臣は『湾岸諸国が統一する動きのなかで、必要ならオマーンは湾岸諸国会議から脱退する。』とまで言っているのだ。

 オマーンはイランと歴史的に深い関係にあり、イランに対して刺激になるような行動をすることは、かえってイランと湾岸諸国との関係をこじらせてしまう、という判断であろう。湾岸諸国は不安に駆られ、軽はずみな行動に出る前に、イランとの関係で歴史的経験のあるオマーンから、学ぶべきであろう。