『革命でテレビは役割を果たせるのか』

2013年12月 7日

 

 アラブの春革命に、カタールのアルジャズイーラテレビが果たした役割は、否定できない。革命の動きを誇大に宣伝し、火に油を注ぐ役割を果たした。結果的にはチュニジアの革命も、エジプトの革命も、リビアの革命も成功した。

 しかし、その後アルジャズイーラテレビの報道に対する信頼性は、アラブ大衆の間で下がっている。事実を伝えたのではなく、アルジャズイーラテレビはあくまでも、体制を打倒することを目的として、歪曲報道をしていたからだ。

 しかし、今となってはどうにもならない。それまでの体制は打倒され、新しい体制が誕生した。しかし、その新しい体制は革命を起こした大衆の意図とは、全く違う方向に向かっているのではないのか。

 チュニジアでは、世俗派の若者たちが中心で始まった革命が、何時の間にかナハダ党というイスラム原理主義の政党を、与党にしてしまっているし、その後の混乱はいまだに続いている。それでもチュニジア人の賢明と穏健さが、この国の場合は革命後の悲劇に、ブレーキを掛けているようだ。

 エジプトでは第二革命が起こり、ついには軍が台頭し臨時政府が誕生したが、まだ落ち着いてはいない。憲法改正から議会選挙、大統領選挙を通じて、安定化に向かう可能性はあろうが、それが確実なものとはいえない状態にある。

 そのエジプトの権力の座から、軍によって追放されたムスリム同胞団の、国内での活動が失敗し、ついに外国の援助にすがって動き始めている。ムスリム同胞団は『自由と公正』という名の新聞を発行し、『エジプト25』というテレビ局を設立したが、どちらも成功しなかった。それはプロのジャーナリストがいなかったことと、ムスリム同胞団色が強すぎたからではないだろうか。

 ムスリム同胞団は結果的に、まともな活動が出来なくなり、今度はトルコのイスタンブールでテレビ局を開局することになった。テレビ局の名は『ラビーア』で、ムスリム同胞団が軍の施設の前に座り込み、多数の犠牲者を出した広場の名にちなんだものだ。

 しかし、このムスリム同胞団のテレビ局開局には、トルコのエルドアン首相と情報部が、全面的にバック・アップしているということが、既に語られ始めている。したがって、このテレビ局の開局は、トルコ政府によるエジプト政府に対する、明らかな敵対活動を目的としたものだ、ということになろう。

したがって『ラビーア』テレビはこれから先、エジプト大衆の広い支持を集めることには、ならないのではないのか。それよりも、アラブ各国の不満分子に火をつけることになり、アラブ各国はこのテレビ局を敵視することになろう。そうなると、このテレビ局の後ろにいるエルドアン首相に対し、湾岸諸国を始めとするアラブ諸国の、怒りが爆発するのではないのか。それは経済面から顕れてこよう