『トルコではたかがスカーフされどスカーフ』

2013年12月 6日

 

  トルコで学校の女性教師が、同僚の教師と学生を引率して、軍のレストランに入ろうと思ったところ、スカーフを冠っていることを理由に、入室が許されなかった。そのことは学生と同僚の前で起こっただけに、この女性教師にとっては、極めて屈辱的なものであったらしい。

 軍のレストランで警護にあたっていた将校は、彼女に対して第一師団からの命令であり、順守しなければならないと応えたということだ。つまり、軍内部で決められていることであり、勝手に現場の将校が判断することはできない、ということだ。

 軍の規定によれば、軍の施設に入る者は、軍の規定に従わなければならないことになっている。例えば女性のスカーフ着用は、この軍の規定に抵触するということだ。

 軍の規定では60歳以上の女性の場合は、一部の髪を出すことによって、スカーフ着用でも軍の施設に入ることを許されるが、それより若い女性はスカーフの着用での入室を、認められないということのようだ。

 トルコの場合、スカーフの着用はすでに政府が許可を出しているのだが、一部には頑強に抵抗する個人や、組織が存在するということだ。以前、大学教授がスカーフを着用して女子学生が教室に入ったところ、激怒して発砲するという事件も起きている。

 トルコ共和国を建国した英雄、ケマル・アタチュルクを信奉する人たちにとっては、オスマン帝国の残滓ともいえる、イスラム的服装は見るだけでも、腹が立つということであろうか。

 軍の規定によれば女性だけではなく、男性にも規定があるそうだ。それは長い顎鬚(ひげを剃っていない状態)の人物の入室を認めないことであり、長衣の着用者も入室を認められないということだ。

 しかし、エルドアン首相は女性のスカーフ着用を奨励しており、冠ることも冠らないことも自由であり、個人の権利だとしている。彼の妻エミネ女史も公の場に、スカーフを着用して出席している。

 この話題を取り上げたのはそこにあるのだ。つまり、軍はエルドアン首相の政策と全く逆の事を行っているということだ。スカーフ着用を認めるか否かは、大した問題ではないように思えるのだが、実はその裏にエルドアン首相と軍との力関係が、存在しているのではないのかということだ。

 これまで何度も書いてきたように、エルドアン首相にとっての脅威は軍であり、ヒズメトというイスラム団体だ。その軍がエルドアン政権に対し、無言の抵抗を明らかに示し始めている、ということではないのか。