『シンベト元トップ・イランの核よりパレスチナが危険』

2013年12月 5日

 

 イスラエルの情報機関であるシンベトの、元トップの地位にあったデスキン氏が、重要な発言をしている。彼はイスラエルのあらゆる情報に、アクセスが可能な人物であるだけに、その発言には重みがある。

 デスキン氏は『イランの核兵器開発問題よりも、イスラエルにとってはパレスチナ問題の方が重要だ。』と語ったのだ。それが何を意味するのかについては、イランが核兵器を開発したとしても、イランという国家を破壊しようとは考えていないだろうということだ。

つまり、イランがもし核兵器を持つに至ったとしても、それは周辺諸国に対する、威圧の道具でしかないということであろうか。

 しかし、パレスチナ問題についてはそう楽観できない。パレスチナ領のヨルダン川西岸地区では、イスラエル人による入植活動が続いており、既成事実が拡大しているのだ。

 将来、イスラエル政府がパレスチナ政府との和平合意のために、入植地を取り払おうとしても、そう容易ではあるまい。ヨルダン川西岸地区に居住した者たちを、立ち退かせることは極めて困難であろう。

 これまでヨルダン川西岸地区の入植問題と、パレスチナ人投獄者の交換交渉が行われてきたが、それはまやかしの解決でしかあるまい。パレスチナ人を次から次へと逮捕して投獄し、それと入植地の交換を図ることは、国際的にも国内的にも許されまい。

 イスラエル政府の政策決定者たちは、パレスチナ問題をどう解決すべきなのかを、明確にする必要があろう。つまり、ガザ地区とヨルダン川西岸地区を含めた、イスラエル国家にするのか、その場合はパレスチナ人にイスラエル国籍を与えるのか、その結果イスラエル国家内の、パレスチナ人が多数を占めた場合、彼らの政治的な権利はどうするのか、と難問が山積されている。

 イスラエル政府がパレスチナ問題を、現状のままで放置するという選択肢もあろう。しかし、その場合はパレスチナ人の不満が拡大し、どのような事態が発生するか、分からない危険性があろう。すでにアラブ諸国では『アラブの春革命』が起こることによって、幾つもの体制が崩壊しているのだ。同じようなことが、パレスチナ人の蜂起によって、イスラエルでも起こる可能性があることは、否定できまい。

 結局のところ、2国家設立案が最も妥当な、選択肢となるのではないか。つまり、イスラエル国家とパレスチナ国家の並立だ。その結果誕生するパレスチナ国家が、イスラエルにとって危険なものでなくするためには、アメリカの深い関与が必要であると同時に、エジプトとヨルダンの持つ役割を、認めるべきであろう。

 今こそ、イスラエルの政策担当者たちは、パレスチナ問題をどうするつもりなのかを、明らかにすべきではないのか。そして、イスラエルとパレスチナ双方が、相互に相手の議会を訪問し、この問題について明確に、自分とイスラエル政府の立場を、語るべきであろう。

 イスラエルがパレスチナ問題の解決を放置し続ければ、世界中でイスラエルに対する不満が拡大し、反セムの動き反イスラエルの動きが、活発化していこう。すでに欧州ではその傾向が、明らかになってきている。

ホロコーストは無かった、それほどひどくは無かった、といった発言が目立ってきているし、ネオナチの動きも活発化し、一部のヨーロッパ諸国ではネオナチの動きが、黙認される方向にもある。何事にも潮時というものが、あるのだろう。