イランがアメリカを始めとする、先進諸国との間で核問題の解決で、基本的合意に達した。そのことは少なからぬ影響を、地域各国に及ぼしている。今回の合意で、最大の被害を受けたのは、イスラエルかもしれない。
イスラエルは今回の合意によって、イランが核爆弾を製造するうえで、一歩前進したと捉えている。そのことは将来、イスラエルがイランの核兵器による攻撃を、恐れなければならない、ということを意味している。
サウジアラビアも同様に、これまで反イラン・キャンペーンの総元締めとして、厳しい立場に立たされているようだ。そうしたことから、イスラエルとサウジアラビアとの関係が、緊密になってきている、という内容の報道も出てきている。
イランは欧米の制裁を受け、軍事的恫喝を受ける中で、独自に相当量の兵器を、何十種類も開発してきている。そのことは、サウジアラビアを始めとする、湾岸諸国にとって脅威であろう。
こうした状況下で、イランは勝者の余裕を見せてか、湾岸諸国との関係改善を呼びかけている。それに対し、クウエイトやアラブ首長国連邦が応じている。
イランが将来、湾岸諸国のいずれに対しても、軍事攻撃する可能性は、限りなくゼロに近いだろうが、イランは別の形で湾岸諸国に対し、恫喝することができよう。それは湾岸諸国のシーア派国民に対して、支援を送ることだ。
既に、バハレーンでは、シーア派国民によるデモが繰り返され、政府側の妥協が待たれるレベルに、達している。
バハレーンに比べ、割合こそ少ないが、サウジアラビアにもカタールにも、アラブ首長国連邦にもクウエイトにも、シーア派国民が住んでおり、何時でもデモが起こる状態にあるのだ。イランはそれをちょっとだけ、その動きを押してやればいいのだ。それだけで湾岸各国は国内混乱を、極めることになろう。
クウエイトとアラブ首長国連邦が、積極的にイランとの関係改善に動き出したのは、そうした背景を意識してであろう。アラブ首長国連邦の場合は、大小トンブ島とアブムーサ島の領有問題を、イランとの間に抱えているが、1970年代にはドファール抵抗内戦で、イランの軍事支援を受けていることから、それなりの関係改善の下地は存在しよう。
イランはこれから、サウジアラビアに対して揺さぶりをかけるのではないか、と思われる。欧米によるイランに対する制裁の時期に、サウジアラビアは積極的にこの問題を支持していたし、最近ではアメリカの意向を無視して、イスラエルとの間で、イラン攻撃を画策している、という噂も出ているからだ。