『エルドアン首相のスキャンダル暴かれる』

2013年12月 1日

 

 トルコ政府のスタッフであろうか、ある人物が極秘の書類を、マスコミに流した。その内容はこれまでご紹介してきた、トルコのイスラム慈善組織、ヒズメトを潰すということを軍に誓ったというものだ。

 この秘密合意は2004年に、エルドアン首相のAPK(開発公正党)と、軍部との間で交わされたものだ。書類には軍の統合参謀長などと一緒に、エルドアン首相と当時外務大臣だったギュル大統領が、サインしているというのだ。その合意文書の原文のコピーが、インターネットで流されたのだからたまるまい。

 この情報を最初に新聞で取り上げたのは。ヒズメトに近い新聞ではなく、一般紙だったというのだから、相当エルドアン首相のたがが、緩んできているということではないのか。

 これでは、エルドアン首相が言い続けてきた、軍の台頭を押さえ込んで民主国家を作る、という話はまるで嘘になってしまうではないか。トルコ国民のなかには、酒を飲むムスリムも少なくないが、根本部分ではきわめてまじめなムスリムであり、エルドアン首相のヒズメト組織という、イスラムの慈善組織に対する圧力は、今後いろいろな形で反政府の感情を、トルコ社会のなかで高たまっていくものと思われる。

 最近になって、エルドアン首相はどうやらツキの神に、見放され始めたのかもしれない。オリンピックの開催地に立候補したが日本に破れ、その後にはゲジ公園デモで弾圧を加えたために、反政府感情がトルコ国内に広がり、次いで2020年の国際博覧会開催国に立候補したが、ドバイに敗れている。

 そのうえ、最近で私学廃止(予備校)問題が、全国的に国民から大反対を受けている。この問題に付いては既にご紹介したので繰り返さないが、ヒズメト組織に対する、随分ばかげた政治闘争を始めたものだと思う。

 以前にも書いたが、エルドアン首相がいま一番恐れているのは、軍によるクーデターと、ヒズメト組織であろう。このいずれかが動き出せば、彼は首相の座を追われ、いままで重ねてきたスキャンダルが、明るみに出てしまうと恐れているのかもしれない。

 トルコの人たちと話していると、多分来年3月の地方選挙の後ではないか、トルコ人は優しいから、結局彼を許すのではないかと言うのだが、意外に結論が出るのは早いかもしれない。転がり落ちるときは早いのが普通だからだ。