人にも国家にも、幸運な時と不運な時があり、幸運の方向に向かって動き出すと幸運が重なり、その逆の場合はどんどん状況が、悪化するということがある。
最近のサウジアラビアの場合、どうも悪い方向への動きが始まっているようだ。それは多分に、サウジアラビア国家がその不幸に、自国を押しやっているからではないか。つまり、自分の手で播いた種が、芽を出し始めているということではないのか。
サウジアラビアは先日、レバノンの首都ベイルートで起こった、イラン大使館を狙ったテロ事件の黒幕であろう、といわれている。アルカーイダにつながるアブドッラ―・アッザームという名の組織が、犯行声明を出しているが、その組織の親組織がアルカーイダであり、そのアルカーイダのスポンサーは、サウジアラビア政府だというのが、最近では常識になり始めている。
これとは全く別の事も、サウジアラビアで起こり、世界の関心を引いている。それはサウジアラビア国内で働く、非合法労働者たちに対する締め付けを強化したために、エチオピア人労働者たちがデモを行ったことだ。結果は、サウジアラビアの警官によって殺害される者が出て、そのことをきっかけにデモは拡大した。
しかし、結局のところ丸腰のエチオピア人たちは、サウジアラビアの警官に弾圧され逮捕されて、その他の国の労働者も含め、サウジアラビアから6万人ほどが、追放されたと伝えられている。
このエチオピアの労働者に対する弾圧と国外追放は、世界中でエチオピア人による抗議行動を起こさせた。アメリカではダラス市で抗議デモが起こり、数百人が参加したと伝えられているし、ノルウエーやドイツ、イギリスでも同様のデモが、サウジアラビア大使館に向けて行われた。
ここで気になるのは、エチオピア人のほとんどがクリスチャンだという点だ。サウジアラビアがそれで特に、エチオピア人を標的にしたとは言えないが、結果的にキリスト教国の人たちは、エチオピア人に対し同情をすることになろう。そのことは、状況を増幅して報道されることになる、ということではないか。
サウジアラビアではもう一つ気になることが起こった。イラク側から6発の砲弾が、サウジアラビア領内に撃ち込まれたのだ。犯行組織はムクタール軍という名の、イランをスポンサーとするシーア派新組織だと伝えられている。
このムクタール軍の代表者であるワスィーク・アルバッタート司令官は、サウジアラビアのイラク関与に対する警告だと語り、サウジアラビアはわれわれの攻撃の範囲内にあることを、知るべきだと警告している。
イランの核問題をめぐるジュネーブ会議の前に、サウジアラビアが背後から動き、会議の失敗を画策し、ベイルートのイラン大使館をターゲットとした、テロを起こしていたことが問題となっている。
どうやら、サウジアラビアとイランは、ドッグファイトを始めているようだ。イラクのムクタール軍による攻撃は、サウジアラビアの産油地帯や積み出し港からは、程遠い事が当面の安心材料であろうか。