『リーベルマンの発言は正論か』

2013年11月21日

 イスラエルの外相であるリーベルマンが、意外な発言をしたことで、イスラエル国内では少なからぬ動揺が、生まれているようだ。そもそも、リーベルマンという人物は、これまでも過激な発言をすることで、世間を賑わしてきた人物だ。

 そのリーベルマン氏が今回語ったのは『アメリカだけ頼っていてはだめだ。イスラエルは新たなパートナーを見つけるべきだ。』という趣旨のものだった。何故リーベルマン外相がそのような発言をしたかについては、彼の発言から判断できる。彼はアメリカがいま多くの内外の問題を抱え込んでおり、これまでのようにイスラエルの面倒を見ている、余裕が無くなったということだ。

 確かに、リーベルマン外相が言う通り、アメリカはいま多くの問題を抱えている。中東問題に限っても、シリア問題をどうするのか、イランへの対応をどうするのか、エジプトとの関係をどうするのかを、考えなければならない。しかも、それらの問題はいずれも、アメリカ一国の意思で決めることは、出来ない性質のものだ。

 イスラエル国民の間には、昨今のアメリカの立場がイスラエルにとって、必ずしも友好的ではないと思える部分があろう。イランの核問題でイスラエルは強硬な対応を求めてきたが、アメリカは次第にイランとの間で、妥協点を探すようになってきている。

 シリアの問題に対する姿勢もしかりだ。アメリカはシリアに対する空爆をあきらめ、話し合いによる解決を試みている。そいればかりか、サウジアラビアやカタール、トルコといった国々に対しては、これまでとは異なり、反シリア政府側を支援しないように、仕向けつつあるのだ。

 こうしたアメリカの姿勢が、イスラエル国民を不安に陥れていたのであろう。そのことを十分に認識して、リーベルマンは発言したのであろう。つまり、アメリカに必要以上の負担をかければ、やがてはアメリカとイスラエルとの関係に、問題が出てくる。したがって、イスラエルは自国が抱える問題の処理に、アメリカだけではない他の国も、協力者にさせなければならない、ということであろう。

 そこで考えられるアメリカ以外の協力者は、ロシアであり中国であり、ヨーロッパと言うことになろう。フランスが最近のイラン核問題で、イスラエルの側に立っているのは、その結果かもしれない。

 中国は一定の能力はあるものの、根本的なイスラエルが抱える問題処理に、役立つとは思えない。ただ、リーベルマン外相は『経済を強化したうえでなければ、パレスチナとの問題解決を進めることはできない。』と言っていることから、今後、中国との間では経済面での協力を、進める事が考えられる。

中国の持つ労働力と、潜在的に巨大な市場と、イスラエルの持つ進んだテクノロジーが結びつく時、新しい展開が起こるかもしれない。その協力については、既に両国の間で基本的な合意がなされている。

そして残るロシアとの協力では、ロシアがイスラエルと敵対する、シリアやイランと関係がいいことから、十分にメリットがあると期待されよう。ロシアがイスラエルを含むか含まないかは別に、イランとシリアに対して働きかけ、緊張を緩和させることは期待できよう。

野党の議員がリーベルマン外相の発言に噛みついているが、今回のリーベルマン発言は何時もとは異なり、世界の実情をよく理解してのものであり、アメリカとの関係維持を、前提としたものなのかもしれない。