トルコではシリアへの介入問題や、シリアのクルドが自治宣言をしたことなどに加え、大きな社会問題が起こっている。それはエルドアン首相が唱えた、私立校に対する閉鎖命令の動きだ。
エルドアン首相が言うには、公立の学校があるのだから、私立の学校は必要ないということなのだが、そう簡単にはいくまい。トルコでは私立校を設置することが教育重視に加え、最も効率的で奇麗なビジネスになっているからだ。
トルコでは片田舎にまで私立の学校が設置され、土地の子供たちを集めている。それが種々の社会問題を、未然に防ぐ効果もあるというのだから、住民父兄の側も黙ってはいない。
教育評論家や社会問大評論家などに言わせると、私立学校ができそこの土地の子供たちが入ると各学校の教育の下、非行に走ることを防げるというのだ。特にトルコの南東部では、クルド・ゲリラが侵入したり、人種差別問題があったり、シリア難民問題が流入したりで、社会状況は教育上好ましくないのだ。
もう一つの問題は、この地域では麻薬がはびこっていることもある。子供達が学校に行かないようになると、非行、麻薬、犯罪、テロリストなどに傾斜していく危険性があるのだ。
貧しい家庭では就学費用の負担が大変だということもあり、子供たちは高等教育を受けることを、断念しなければならなくなる、という現象が起こる。しかし、私立学校は子供の成績が良ければ、あるいは家庭の事情が許さなければ、子供たちに奨学金を与えてもいるのだ。
教育的にもビジネスとしても、そして失業対策としても有効なこの私立学校運営を、何故エルドアン首相は反対しているのであろうか。実はその裏には教育とは全く関係ない、政治的な意図が隠されているようだ。
トルコで最も大きな反政府勢力となりうるのが軍であることは、他の国々と変わらないが、トルコの場合にはもうひとつ、ヒズメトという慈善組織がある。この組織にはトルコ国民の20パーセントが、参加しているといわれている。
ヒズメトは教育産業を手掛けており、彼らが運営する学校の数は、相当なものであろう。ビジネスとしても成功しており、中央アジア諸国やアラブ諸国でも、学校運営をしている。
組織力と資金力があるこの組織が、エルドアン首相にとって危険な存在になってきている、ということであろうか。すでに述べたように、 エルドアン首相にとってその政権基盤に、脅威となりうる組織には軍がある。エルドアン首相の頭の中では、その次がこのヒズメトなのかもしれない。