アメリカが軍事経済援助を遅らせているために、エジプトはご機嫌斜めなようだ。そのためエジプトは湾岸諸国を、スポンサーにすると同時に、ロシアとの関係を改善し始めている。
ロシアからはラブロフ外務大臣とセルゲイ国防大臣が、そろってエジプトのカイロを訪問している。その後にはプーチン大統領もエジプトを訪問する、と既に公表されている。
これからロシアは何を、エジプトに提供するのであろうか。当然のことながら、ロシアが自信を持ってエジプト側に提供できるのは兵器であろう。今回の外務国防大臣の訪問時に具体的な話が進んだようだ。
今回の外務国防大臣の訪問のなかから出てきた、もう一つの話題がある。それはスエズ運河に関連するものであり、きわめて新しい発想だと思われる。言われてみればその通りなのだが、なかなかそこに気が付かないのが、人間なのかもしれない。
ロシア側が今回提案したのは、スエズ運河の拡幅工事ではなく、鉄道を敷設することによって、足りない貨物輸送を増やすという考えだ。これまでエジプトはスエズ運河の拡幅工事をして、運河の船舶航行量の不足分を補うということを検討していた。
スエズ運河の拡幅工事は、実際には大工事であり、巨額の予算も必要だったのであろう。そのためにエジプトは、決断を躊躇していたものと思われる。しかし、エジプトにとってスエズ運河の航行料から得る収益は大きいために、何とか進めたいと思っていたようだ。
そこにロシアが提案したのが、スエズ運河に沿って鉄道を引き、運河の通過船舶数を増やすのではなく、鉄道で貨物輸送量を増やして、収入を補うという考えだ。この場合、建設費用はそれほど巨額ではなく、しかも、鉄道が敷設されると飛躍的に、貨物輸送量は増えるということだ。その上、船舶に比べ鉄道の場合は輸送時間が、3分の1で済むということだ。
この鉄道建設提案は今後、エジプト政府によって真剣に検討され、意外に早く結論を出すかもしれない。また、完成時には貨物列車だけではなく、客車も走らせ、新しい観光資源になる可能性も高かろう。
既存の発想の域を出られないでいる人たちには、こうした考えは浮かんでこない。ロシアに軍パイを上げようではないか。