ロシアから外務大臣と国防大臣が、そろってエジプトを訪問した。今風に言えば、2+2の会議をするためということであろう。つまり、今後の軍事外交面でのエジプト・ロシア関係を話し合うというものだったろう。
アメリカと深い関係にあるエジプトが、何故いま新たにロシアとの関係改善に動いたか、といぶかる人もいるだろうが、エジプトとロシアとの関係は、1970年代までは極めて良好であった。ナセル時代にはアメリカと敵対し、ソビエトと親密な関係にあったのがエジプトだ。
それがサダト大統領の時代に結ばれた、キャンプ・デービッド合意で完全に様相を変えた、ということだ。同合意には、アメリカからの軍事経済援助が盛り込まれてあり、これまでアメリカは毎年13億ドルの援助を送ってきていた。
しかし、経済的な問題がアメリカで発生していることと、エジプトで第3革命後にクーデターが発生したため、民主的でない国に援助は送れないという原則に基づき、アメリカからのエジプトへの援助は停止状態にある。
その虚を突いたのがロシアなのか、あるいはエジプト側から積極的に働きかけたのかは知らないが、外相国防相のエジプト訪問が実現した。今回ロシアの外相はエジプトを離れるに当たり、特別なコメントをしていないが、だからと言って成果がなかったわけではない。そのなかでは多くの協力に向けた可能性と、合意がなされたようだ。
元ロシア大使を務めたイッザト・サアド氏は、ロシアとエジプトとの間で武器生産の協力計画が進むと語っている。この計画の推進には時間がかかろうが、すぐに実行されるものとしては、エジプト・ロシア合同軍事訓練があげられる。
加えて、防衛協力、テロ対策での協力、軍事教育協力、といったこともほぼ合意に至ったようだ。そればかりか、エジプトのアレキサンドリア港には、ロシア艦隊が停泊もした。
そのことは今後、ロシア艦隊がエジプトのアレキサンドリア港を、自由に使えるようになる第一歩になるのではないか。これはアメリカの地中海艦隊にとって、相当ショッキングなことであったろう。
だからと言ってロシアは、アメリカを無視して動いたわけではないようだ。報道によれば、ロシア側は今回のエジプト訪問について一定の内容を、アメリカ側に報告しているということだ。最近、ロシアの外交面での動きが活発であることが感じられる。例えばシリアの化学兵器問題をめぐっては、アメリカに軍事行動を思いとどまらせている。
これは中東での主役が、アメリカからロシアに代わる前兆であろうか。