『シリアのムスリム同胞団が新党結成』

2013年11月13日

 シリアに対する対応をどうしようかということが、世界の課題になっているいま、シリアの反政府派は幾つにも別れ、統一代表を出し難い状況にある。これでは政府との交渉もできないし、諸外国の支援を受けることも難しいだろう。

 結果的には、シリアのアサド体制に反対の国々が『誰でもいいから武器と金を送る、アサド体制を打倒してほしい。』という乱暴な形に、なってしまうのではないのか。

 事実、その結果がむき出しの形で表れているのが、シリアで頭角を現している、アルカーイダ直属の組織ヌスラであろう。ヌスラの戦闘員の蛮行は、これまでに何度も報じられ、彼らの殺害シーンや人肉食のシーンは、ユー・チューブなどを通じて、世界にばらまかれてきている。

 そうした悪い意味で目立った組織とは別に、以前から考えられてきたのがシリアのムスリム同胞団の存在だ。シリアのムスリム同胞団は広範にわたる組織であり、父アサド大統領の時代に大弾圧を受けて以来、地下に潜って生き延びてきていた。

 したがって、専門家の間では今回の内戦の中で、ムスリム同胞団がどのようなタイミングで、どう政治の表面舞台に出てくるのかが、関心の的になっていた。

 それがやっと最近になって表面に出てきた。ムスリム同胞団が中心となって、国民憲法自由党という名の、新党を結成するというのだ。結成メンバーにはクリスチャンもクルド人もそれ以外の人たちも、含まれるというものだ。

 その内訳は、全体の3分の1はムスリム同胞団のメンバーが占め、後はイスラミスト3分の1、最後の3分の1はリベラル派と民族派となっている。つまりクリスチャンやクルド人、アラウイ派などのマイノリテイはリベラルに含まれることになるのか。

 この新党はムスリム同胞団が主導するわけだが、当然、党首はムスリム同胞団の元ロンドン留学組のムハンマド・ワリード氏が予定されており、副党首にはクリスチャンが予定されているが、まだ名前は明らかになっていない。なおワリード氏はシリアのラタキア市の出身で、ダマスカス大学医学部を卒業後、イギリスで学んでいる。

 新党は党是として平等、公正、自由、民主的統治体制、シリア国民の統一、シリア国民の尊厳、イスラムの重視、シリアの国民と領土の維持、パレスチナ支援、また裁判の独立性維持などを掲げている。

  また、民族、宗派、マイノリテイに対する対等な扱いを基本とし、民族主義を高揚し差別や例外を認めないという方針だ。この新党はそのことに加え、知的でありイデオロギーを重視し、政治的手法を活かすということのようだ。

 問題はエジプトのムスリム同胞団の失敗を、シリアのムスリム同胞団はどう克服するかということであろうが、そのことを考慮してであろうか、シリアのムスリム同胞団が結成する新党は3つの種類のメンバーで構成するという試みのようだ。

 しかし、ムスリム同胞団が3分の1、イスラミストが3分の1となると、あらゆる決定がこれら3分の2によって決められ、残りのリベラル派や民族派で構成される、3分の1は、あまり影響を与え得ないのではなかと懸念されるのだが。