『シーシ大統領待望論とエジプト経済の今後』

2013年11月12日

 エジプトではシーシ国防大臣の人気が、爆発的に拡大している。世の中が混乱した時は、結局民主主義よりも問題解決を図れる、強肩の人物が待望される、ということであろうか。

 リファー・ナスラッラーなる人物が中心になって始められた、シーシを大統領にしよう運動は、現在盛り上がりをみせているようだ。彼等はタマロド運動にあやかってか、シーシを大統領にしようという、署名運動を始めている。

すでに署名者の数は1500万人を超えているということであり、これから4000万人の署名を集めると豪語している。この数がどこまで正しいのかは知らないが、失脚したモルシー大統領の得票数が、1300万票であったことを考えると、シーシ・ブームがいかにすごいかが分かろう。

そして、彼等はもしシーシが大統領に立候補しなかった場合には(出来なかった場合も含めて)、投票をボイコットしようと呼びかけている。何が何でもシーシ国防大臣に、大統領に就任して欲しいということであろう。

ここまで持ち上げられたのでは、シーシ国防大臣も悪い気はしないだろう。軍籍を外れ、閣内からも去って立候補するのか。あるいは強引に現職にとどまって立候補するのか(その場合には立候補に問題があるのだが)、思案のしどころであろう。

加えて、エジプトの経済状態を考えた場合、次に大統領に就任する人物は、大きな問題を抱え込まなければならないことは、歴然としている。アメリカの援助が停止状態にあり、現在はサウジアラビアとクウエイト、アラブ首長国連邦などからの援助に頼って、何とか急場をしのいでいる状態だ。

しかし、国内では観光産業が死に体にあり、他の産業もまだ動き出していない。最大の問題は治安であり、この治安問題が解決されない限り、湾岸諸国や欧米からの企業進出も、無理ということになろう。

ムスリム同胞団のモルシー政権は、IMFからの巨額の借り入れを決めていたようだが、それには条件が付いている。国庫からの国民生活必需品への補助を、大幅に削減しなければならないのだ。パンや砂糖、紅茶、食用油、ガソリンなど、まさに国民の日々の生活に直結するものだ。IMFからは、加えて増税が義務付けられているのだ。

来年の2~3月には国会議員選挙、それに続いて大統領選挙が待ち受けているが、資金欲しさにIMFとの借り入れを進めたのでは、国民から支持を集める事ができないばかりか、再度の国民による大規模デモを、覚悟しなければならないだろう。シーシ国防大臣はいま、前にも後ろにも動けない状態かもしれない。