『エルドアン首相の傲慢が親友を失うことに』

2013年11月11日

 以前にご報告したが、トルコのエルドアン首相はどうも自分の力を、過信し過ぎているようだ。自分が過去10年間の間に、トルコのハイパーインフレを鎮め、経済を活性化し、周辺諸国との関係を修復し、トルコはかつてのオスマン帝国同様に、中東地域での確固たる地位を、再獲得したと考えているようだ。

 しかし、その成果は彼一人の手によるものではない。時期が良かったことと、トルコ国民がその時代の波をうまくとらえたこと、そして中東地域の政治環境が、エルドアン体制の味方をしたからに他ならないのだ。

 しかし、そうは考えないエルドアン首相の問題発言に、AKP(開発公正党)の幹部たちは、そろって頭を痛めていた。何とかしなくては、AKPは結果的に与党としての地位を失うばかりか、トルコ国内を分裂させ、外国の破壊活動を許してしまう、危険性があるからだ。

 既に、エルドアン首相の自信過剰が、シリア問題への介入を強め、結果的に、外国のジハーデスト(聖戦の戦士?)のトルコ入りを許し、彼らによるトルコ国内での、破壊活動が始まっているのだ。

 トルコ国民の間では、次第にエルドアン首相の手法に反発する者が、増加してきている。それがゲジ公園で始まったデモを皮切りに、全国各地で起こるようになってきている。デモは力による抑え込みで、大規模なものにはなっていないが、時間の問題であろう。

 アンカラの大学敷地の中に道路を引く計画でも、学生の反発は大きくなった。そうしたなかで、エルドアン首相の『学生寮は男女別にすべきだ』という発言が、新たな怒りの炎を燃やし始めていた。

 ゲジ公園デモの最初の段階と同じように、ブレント・アルンチ副首相がエルドアン発言を訂正することを試みた。しかし、エルドアン首相はブレント・アルンチ副首相の発言を遮り『学生寮は男女別にする』という彼の考えを確認した。

 これではブレント・アルンチ副首相の立場がなくなる。良かれと思って言ったことが、エルドアン首相によって全面的に否定されたのだから。彼は『私なりの存在感があるべきだし、彼のパンチング・ボールでもない。」とまで語っているのだ。

 つまり、AKP結党以来の親友同士が、遂に袂を分けたということだ。そうなると、ブレント・アルンチ副首相が次の大統領選挙に、出馬することもありうるだろう。 エルドアン首相が夢想しているほど、彼に対する支持が強いとは思えない。大統領選挙の結果は彼にとって、厳しいものになるのではないか。