いまエジプトでは、シーシ・フィーヴァーが起こっている。シーシの名前の英語やアラビア語の、つづりの文字がデザインされ、それが付いたペンダントが売られ、シーシ・サンドが売られ、シーシ・チョコレートが売られ、食用油までもシーシ・ブランドが、出ているようだ。
以前にシーシとナセルの写真ポスターが、出ていることはご報告したが、いまではそんなレベルではないようだ。タレント並みにシーシのブロマイドが、額に収まって売られているのだ。
このシーシという人物は、述べるまでも無い、6月30日に起こったエジプトの、第三革命を受け止め軍を出動させ、モルシー率いるムスリム同胞団政府を、終焉に導いた救国の国防大臣なのだ。
報道によれば、ムスリム同胞団側が強行した座り込みデモを、軍が終わらせてくれたと歓迎するエジプト国民の割合は、67パーセントにも上るということだ。国民にしてみればやっとゴタゴタが収まった、という感じであろうか。
このことが、いまの国防大臣であるシーシ氏のブームというか、フィーヴァー状態をエジプトに、生み出しているのだ。何故こうも簡単に、エジプトではシーシ・フィーヴァーが、起こるのであろうか。この点について、現地の専門家は、エジプト人は精神的に英雄誕生を待望し、それを喜ぶ傾向がある、と分析している。
それに加えて、2012年のモルシー政権誕生以来、続いていた国内の混乱を終わらせ、治安を回復してくれている、という冷静な期待と評価もあろう。事実ムスリム同胞団側による、反政府デモは相変わらず続いてはいるが、だいぶ盛り上がりに欠けてきている。
ムスリム同胞団のデモよりもよりも、いまではシーシ・フィーヴァーが主流になってきているようだ。そうした動きのなかからは、シーシ国防大臣に是非とも、大統領に就任して欲しい、という動きが出てきている。
既にエジプトの都市部では、シーシ国防大臣を大統領にしよう、という署名運動が始まっていることも事実だ。故ナセル大統領がエジプトとアラブ世界全体の英雄であったことは、エジプト人の誰もが知っている。彼は政権担当時に、エジプト国民とアラブ人のプライドを、回復してくれたことによろう。
いまシーシ国防大臣は、もう一度エジプト国民とアラブ人のプライドを、回復してくれるのだろうか。国民の彼に向ける熱い眼差しを、シーシ国防大臣はいま、一身に浴びているのだ。彼に期待したい。