『噂はやがて真実となり犠牲を生む』

2013年11月 9日

 ポロニュームという放射性物質が、故アラファト議長の身辺から出てきたことで、彼に対する暗殺があったことが、ほぼ確定したようだ。これはアラファト議長の妻である、ソウハ女史の意向によって、細かく調べられた結果だった。

 最初の段階では故人の衣服などが調べられ、ついには西岸にあるアラファト議長の墓を、掘り起こしての調査となった。その結果が、確実にポロニュームがアラファト議長の遺体に、残っていたというものだった。

 このことが明らかになった後、パレスチナ自治政府はイスラエルが真犯人だ、と主張し始めている。それ以外には、アラファト議長を殺そうと考えていた者は、いなかったからだというのだ。しかし、イスラエルを真犯人と決め付ける証拠は、なんら示されていない。

 常識的に考えれば、どれだけイスラエルの情報機関が優秀でも、アラファト議長をポロニュームで、暗殺することは出来なかったのではないかと思われる。それだけ彼の周りの警護は、厳重だったからだ。

 銃弾や爆弾を使ったテロが、出来るような状況には無かったし、飲食物についても厳しいチェックがなされていた。したがって、アラファト議長を暗殺できるのは、彼に最も近い距離にいた、人物たちではないのか。

 その意味では、アラファト議長が信頼を置き、イスラエルとの連絡役を担当させていたガザ地区の治安担当者だった、ムハンマド・ダハラーン氏が一時期疑われていたようだ。

 それ以外にも、何人かのパレスチナ自治政府幹部の名が挙がっていたが、パレスチナ内部での真犯人探しは、次第に立ち消えになっていった。真犯人を探せば探すほど、パレスチナ内部の犯行の可能性が、高かったからかもしれないし、その犯人はあるいはパレスチナ自治政府の、トップ・レベルの人物であった可能性も、否定できなかったからかもしれない。

 パレスチナ自治政府側がイスラエルを声高に、アラファト議長暗殺の真犯人と叫び始めているのは、そうしたこれまでの経緯によるのかもしれない。パレスチナ自治政府がイスラエルを真犯人の最右翼というのなら、しかるべき確実な証拠を示す義務があろう。

 しかし、たとえ嘘であっても100辺繰り返して言うと、何時の間にかその嘘は真実になってしまうのが世の中だ。そして、その結果は濡れ衣を着せられた者たちが、ツケを払わされることになる。気の毒なことに、ヨーロッパでは30%近くのユダヤ人たちが反セム(反ユダヤ)の動きを恐れて、移住を希望しているということだ。