トルコのシリア内戦に対する関与が、やがてはトルコにとって危険になるだろうということは、既に何度か書いてきた。常識的に考えれば、誰にも予測がつく話なのだ。
外国から集まったジハーデスト(聖戦の兵士?)には、サウジアラビアやカタールが資金と武器を渡していた。そしてその引き渡し場所はトルコであり、トルコ軍あるいは情報部が、相当関与していたものと思われるからだ。
シリアの外人部隊がシリア内戦で、優位に立っている分には問題はないのだが、不利な立場に立てばおのずから戦場は、シリアとトルコとの国境にまたがることになる。
いままさにそのような状況が、始まっているのだ。さすがにここに至っては、トルコ政府も隠ぺいが困難になったのであろう、ギュル大統領がシリアの外人部隊の存在は『地中海地域をアフガンにする。』と言い始めているのだ。
そればかりではない。トルコのザマン新聞は『シリアのアルカーイダがトルコの大都市を、ジャンプ台にする攻撃をしよう。』と書いているのだ。つまり、シリアの内戦はすでに、トルコ内部の安全を、脅かす形になっているということだ。事実、トルコの南部の諸都市では、シリアから入り込んだと思われる、テロリストによる破壊工作が、何度か起こっている。
これらの事は、トルコの警察や情報機関の分析にも、明確に表れているのだ。2台の爆弾車によるテロが起こっているし、それ以外にも未遂の爆弾車が、5台も発見されているのだ。
イランの報道でも『シリアのテロリズムがヨーロッパ諸国にも拡大する。』と予測している。この発言はカザフスタンとの治安会議で出てきたものであり、両国はテロリズムがシリアで成果を挙げなかった場合、地域全体に広がり、それはヨーロッパまでも、拡大していくだろうという予測だ。
イランとカザフスタンは相互に協力して、シリアのテロリズムの自国への拡大を、阻止する考えのようだ。それだけではなく、カスピ海周辺諸国は一丸となって、このテロリズムの拡大を、抑える必要があることを、強調してもいる。
シリアに集結したテロリストの今後の行動は、ここに予測されている通りであろう。トルコに逃げ場を求め、トルコが強硬対応に成功すれば、テロリストたちはヨーロッパに逃げ込み、そこで活動を展開することになろう。
トルコが取りうる策は、テロリストたちにヨーロッパへの移動を、黙認することにより、自国への被害を最小限にする、という策ではないか。そうなれば、ヨーロッパ諸国のトルコに対する信用は、大幅に下がろう。