『バデーウ、シャーテル裁判を怖がる裁判官たち』

2013年10月30日

  ムスリム同胞団の選んだ大統領、モルシー氏に対する裁判が、近く予定されているが、それと並んで、ムスリム同胞団のナンバー1とナンバー2の裁判が、予定されていた。

 述べるまでもなく、ムスリム同胞団のナンバー1はムハンマド・バデーウ師、ナンバー2はハイラト・シャーテル氏だ。この二人の裁判はさすがに、裁判官たちの腰を引かせているようだ。

 現在取りざたされている、彼等にかけられている嫌疑は、ムスリム同胞団メンバーと、一般人のムスリム同胞団支持者たちに対する、扇動による殺人罪と暴力行使だ。そうであるとすれば、そのことが正式に認められた場合、二人は死刑か終身刑、ということになろう。

 もし、そのような判決が下されれば、当然のこととして、ムスリム同胞団による報復が、あらゆるレベルで起ころう。第一には、大規模デモと破壊工作、第二には、裁判官や要人に対するテロであろう。

 一番危険なのは裁判官たちであろうが、もしゆるい判決を出してごまかせば、世俗派の国民が黙ってはいまい。どちらに転んでも裁判官たちにとって、身の安全は保障されないということだ。

  彼等に対する警備を強化して、身体的危害が加えられないようにしても、家屋に対する放火などが起こりえようし、家族に対する襲撃も起こりえよう。

 ムハンマド・モルシー前大統領は、ムスリム同胞団の序列では、ナンバー5かナンバー7ぐらいだ、といわれていたが、それでも裁判をめぐって、ムスリム同胞団は大規模デモを計画しているのだ。そうである以上、ムハンマド・バデーウ師の場合は、相当過激な報復が考えられよう。

 それでは誰が彼等を裁けるのだろうか。多分、彼等を裁けるのは、軍事法廷だけではないかと思われる。しかし、これについても問題がある。一般人を軍事法廷で裁いていいのか、という法律上の解釈問題だ。すでに一部の弁護士は、そのことを追求し始めているのだ。

 もう一つ考えられる裁判官の裁判拒否は、宗教的な面にあるのではないか、ということだ。ムスリム同胞団のトップを裁き、もし終身刑なり死刑に処した場合、日本風に言うならば、化けて出られるのではないかということだ。

 つまり、アッラーの罰を受けるのではないか、と躊躇しているのかもしれない。ムスリム同胞団組織は結成されて以来、85年も経過しているのだ。そこには何らかの正統性がある、と考えても不思議はあるまい。