アメリカがキャンプ・デービッド合意以来、エジプトに送っていた軍事援助と経済援助が、7月3日に起こった軍のクーデターにより、凍結された状態になっている。アメリカはそのことを、10月9日に明確に発表した。
このことはエジプトにとって、大きな痛手となったことは、述べるまでもない。エジプトはアメリカに代わるスポンサーを、必要とするようになったのだ。その第一が湾岸諸国だった。サウジアラビアやクウエイト、アラブ首長国連邦が巨額の援助を約束した。
つい最近では、エジプトのビブラーウイ首相の、アラブ首長国連邦訪問を機に、アラブ首長国連邦は39億ドルの援助を約束している。多分それはサウジアラビアやクウエイトにも、追加援助をさせることに繋がっていくものと思われる。
ビブラーウイ首相はアラブ首長国連邦を訪問した折、エジプトの安全は湾岸諸国の安全と直結している、という発言をした。湾岸諸国はいま、アメリカの心変わりで、アメリカ・イラン関係が改善の方向に向かっている時期だけに、ビブラーウイ首相の発言を、重く受け止めたものと思われる。
エジプトの経済軍事危機は湾岸諸国だけではなく、ロシアにも強い関心を抱かせたようだ。近くラヴロフ首相がエジプトを訪問する予定になっているし、プーチン大統領もエジプトを訪問する予定がある。
このことは述べるまでもなく、エジプトとロシアとの関係が、今後大きく躍進することを予想させる。エジプトにとってはアメリカへの意趣返しもあるだろうし、ロシアの援助も期待したいところであろう。
そして、エジプトとロシアとの関係が深まれば、湾岸諸国もエジプトの軍事力に対して、大きく期待することが出来るようになろう。アメリカが湾岸諸国を見捨てても、エジプトが直接的に守ってくれ、それをロシアが後ろから支える形になるからだ。
それではロシアは、エジプトとの関係が再開することに、何のメリットを考えているのであろうか。述べるまでもなく、エジプトの海軍基地の利用だ。シリアのアサド体制が不安定になっているいま、シリアのタルトース港に代わる地中海に面した海軍基地が、ロシアには必要なのだ。その意味ではエジプトの軍港は、ロシア海軍にとって十分満足できるもののようだ。
ロシアはそのこともあってか、6月30日革命(第2革命)に対して、前向きな立場にある。つまり、現在の軍主導の新政府に対し、理解があるということだ。エジプトはアメリカに対し、対応に改善が見られなかった場合、キャンプ・デービッド合意破棄も、カードとして使えるのだ。アメリカの対応が見ものだ。