最近どうも気になってしょうがない事がある。それは親米諸国の中にアメリカ離れともとれる動きが、目立ってきているからだ。しかも、それは極めて露骨な形で、顕われてきている。
例えば、最近サウジアラビアのバンダル情報長官などが口にした、極めて危険内容の発言がある。いわく、サウジアラビアはアメリカの中東政策に、激怒しているというものだ。
その内容とは、例えばイランとアメリカの関係改善だ。オバマ大統領はイランのロウハーニ大統領と、個別の会談はしなかったものの、空港に向かうロウハーニ大統領に電話している。その後のアメリカ・イラン関係には、前向きな傾向が目立ってきている。
サウジアラビアにとって、イランは最大の仮想敵国であることを考えれば、オバマ大統領の行動は裏切り以外の、何物でもなかろう。そして、アメリカはシリア対応でも、サウジアラビアを裏切る形の行動を採っている。アサド体制を潰すのではなく、生きながらえさせる選択を、オバマ大統領はしたのだ。
サウジアラビアの盟友であるエジプトに対しては、非民主的であるという疑いから、アメリカは援助を凍結している 。そのことはサウジアラビアが警戒している、エジプトのムスリム同胞団を激励することになるのだ。
サウジアラビはこれらの問題以外にも、パレスチナ問題は後退することこそあれ、何ら進展していない、とアメリカを非難している。結果的に、サウジアラビアは『アメリカからの兵器輸入を再考する。』ことと『石油取引先を変える。』と言い出している。
エジプトとアメリカとの関係にも、変化がみられる。エジプト政府はアメリカの冷たい対応に対し、少なからず怒りを感じているようだ。そのなかから、エジプトはロシアとの関係強化を、検討し始めているようだ。近くエジプトからは政府の高位の代表団が、モスクワを訪問するという情報が流れてきている。
トルコとアメリカとの関係にも、少なからぬ変化の兆しが、見え隠れし始めている。サウジアラビアが怒ったのと同様に、トルコもアメリカのシリア対応に腹を立てているようだ。トルコにとってシリア問題への、アメリカの対応変化は、自国の安全に直結するのだから、無理もなかろう。
イラクとの関係も結局は軍事介入して、サダム体制を打倒したものの、莫大な額の軍事費を費やしながら、何ら具体的なメリットは得ないで、終わったのではないか。アフガニスタンも同様であろう。
こうしたアメリカの迷いの対外政策は、同国の経済状況を悪化させ、ついには世界の警察官としての立場も、経済的指導国家としての立場も、弱めることになった。そのことはアメリカがもう世界をリードしていけないということだ。
これまでの親米諸国はこうした変化を、敏感に感じ取り、立ち位置を少しずつ変えなければ、自国の将来が危険になる、と考え始めているのかもしれない。そうは言っても、アメリカは大国であり、その力が一気に低下することはないとしても、そうしたことを検討するぐらいは、日本もやっておいた方がいいのではないだろうか。