サウジアラビアが国連安保理の理事国に選出されたことは、同国にとって極めて名誉なことであるはずだ。アラブ世界はもとより、第三世界の代表としてサウジアラビアは発言権を、持つことになるからだ。
しかし、サウジアラビア政府はこの国連安保理の、理事国になることを拒否して、問題となっている。それには、サウジアラビアなりの理由があるようだ。サウジアラビアはこれまでの国連安保理の行動は、公平ではないと判断した。
たとえば、パレスチナ問題については、1967年以来何の進展も見ないばかりか、次第にイスラエル側がパレスチナの領土とされる、西岸地区や東エルサレムにも食い込んでいるのだ。
サウジアラビアが怒りを露わにした最近の問題は、多分にシリアに対する国連安保理とアメリカの対応、イランに対する対応、そしてエジプトに対する対応があるのではないか。
シリアに対する対応では、結果的にアサド政権が生き残れる道を、開くことになった。国連の調停で化学兵器を口実に予定されていた、アサド体制打倒のためのアメリカ軍による攻撃は、取り止めになっている。そのことは、今後サウジアラビアに対する報復がある、危険をはらんだものだ。
イランの核問題でも、ロウハーニ大統領とオバマ大統領との間で、ある種の蜜月ムードが生まれ、妥協案が出てくることが予想される。欧州諸国は既に、イランに対する制裁をやめよう、と言い出しているのだ。
エジプトに対する対応では、アメリカはモルシー前大統領の逮捕や、その後ムスリム同胞団の反政府デモが継続されていることで、エジプト政府に対する軍事援助を始めとする援助が、難しくなっている。サウジアラビアは一日も早い、エジプトの国内安定を望んでいるが、このままではそれが不可能なのだ。
アメリカ政府はサウジアラビアがこうした理由から、国連安保理はダブル・スタンダードだと怒っていることに対し、何らかの手立てをしなければ、ならなくなっている。
そうな言っても、いまさらシリアのアサド体制を打倒するための、軍事攻撃を実施することは、不可能であろうし、そんなことをすれば、アメリカは国連決議を無視している、と非難されることになろう。
イランについても同様であり、欧州諸国の意向を無視するわけにはいくまい。そしてエジプトについても、突然援助を再開することはできまい。何らかの方法を講じなければなるまいが、それは容易ではなさそうだ。つまり、サウジアラビアとアメリカとの関係が、当分緊張状態を続けるということであろう。