シナイ半島はエジプトに帰属する地域ではあるが、いまでもエジプト政府の統治が、完全でない状態にある。
そのために、シナイ半島はある種の、無法地帯になってきていた。そこにはエジプト各地や、パレスチナのガザ地域から、密輸を商売にするやからや、武器の取り引きに携わっている者たちが、集まっていた。
ムスリム同胞団政権下では、シナイ半島の無法地帯状況は黙認され、リビアから出てくる武器取引の、一大拠点となっていた。それだけならまだいいのだが、ここで不法活動する者たちが、ムスリム同胞団の意向を受けて、これまで何度も軍や治安警察を、攻撃するという事態が、起こってきていた。
軍がシナイ半島の治安維持に本格的に乗り出すと、彼等は秘密のトンネルを通じてガザに逃げ込むために、エジプト軍側はガザに通じる、秘密トンネルの破壊を進めた。
こうなると、密輸業者は仕事ができなくなる。そのため軍の秘密トンネル摘発が進むにつれて、シナイ半島に潜伏している不法集団が、エジプト軍に対し激しい反撃を、展開し始めた。
いまでは、シナイ半島に3000人から1万人の、不法居住者がいると見積もられている。もちろん、彼らのほとんどは、テロリストであり犯罪集団なのだ。
これらの集団が、シナイ半島を挟むアフリカ大陸側にもネッワークを広げ、最近では、イスマイリーヤ地区でも破壊活動を、展開するようになってきている。先日もイスマイリーヤ市の治安本部に近い場所で、爆弾テロがあり犠牲者が出ている。
問題はシナイ半島側とアフリカ大陸側とに、テロリスト集団が活動を展開するようになると、スエズ運河の安全な航行が脅かされる、危険性があるということだ。いままでのところは、まだ通過する船舶の誘導をする、ナビゲーターに被害は出ていないが、その安全な状態が今後も続くという保証は、何処にも無いのだ。
イスラム原理主義のテロ集団は、アメリカを始めとする西側諸国を、敵と考えている。そうなると、彼らがアメリカの艦船や西側の船舶を、攻撃することもありうる、ということではないか。
日本の船はどうなのであろうか。いまどの程度の日本の貨物が、スエズ運河を通過しているのであろうか。気になるところだ。