『米イラン接近はトルコ湾岸接近を生むか』

2013年10月20日

 

 9月の国連総会が開かれた終わりに、ハプニングが起こった。それはオバマ大統領がイランのロウハーニ大統領に、電話するという出来事だった。国連の場での対話が、実現するか否かが関心を呼んでいたのだが、対話は行われなかっただけに、この携帯電話でのやり取りは、国際的に大きな関心を呼んだ。

 しかし、時間が経過するに従い、オバマ大統領のロウハーニ大統領に対する電話は、単なる会話ではないことが明らかになっていった。アメリカは完全にイラン対応を、変更しようとしているということだ。

アメリカのジョンケリー国務長官は『イランとの外交対話の窓を開いた。』と明言している。そのことが湾岸アラブ諸国をいま震え上がらせている。アメリカとイランとの関係が改善すれば、イランが湾岸諸国に及ぼす無言の圧力は、自然と増すことになるからだ。

 湾岸アラブ諸国は押しなべて、イランと同じシーア派イスラム教徒を抱えており、いずれの国でも不穏な動きを示している。なかでもバハレーンでは危険な段階に、入ってきていると言っても、過言ではないだろう。

 シーア派の中東地域における台頭を、懸念する湾岸諸国にとって、最近のアメリカによるシリア対応の変化は、きわめて不満なものであろう。シーア派の一派であるアラウイ教徒の、アサド大統領政権がどうも持続しそうに、なってきたからだ。

 アメリカとの緊張の中でイランはこれまで、軍事力を強化してきてもいる。それに対抗するためには、湾岸諸国もアメリカから大量の兵器を、輸入せざるを得なくなっているのだ。最近サウジアラビアがバンカー・バスターを輸入することを決めたのはその好例であろう。

 湾岸諸国はアメリカからの兵器輸入だけでは不安であり、最近になってトルコとの関係強化を、図ろうとしているようだ。湾岸諸国とトルコとの間には、既に軍事協力協定が結ばれているが、今後それが強化されていくということであろう。

 当然この湾岸諸国の動きは、軍事協力にとどまらず、トルコとの経済協力も進んでいくことになろう。それはエルドアン首相にとって、追い風になるかもしれない。少なくとも、トルコの企業家たちにとっては、世界的な景気後退のなかでの、朗報ということではないか。