エジプトの元外相であり、アラブ連盟の事務総長を務めたアムル・ムーサ氏は、現在、エジプト憲法改正委員会のリーダーを務めている。
彼は最近行った、クウエイトのアッラーイ紙とのインタビューの中で、湾岸諸国のエジプトに対する援助を高く評価した。この援助はサウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦からのものであったが、アムル・ムーサ氏はこれら諸国の兄弟愛の表れであり、6月30日革命(今年の第二革命の意味)に対する、明確な支持だと語っている。
それとは逆に、アメリカや西側の諸国の6月30日革命への不理解については、不満を漏らしている。
同時に、アムル・ムーサ氏はこのインタビューの中で、アメリカのエジプトに対する援助が凍結されていることは、アメリカ内部の問題であると同時に、エジプトの変化に対する、不理解だとも語っている。
エジプトとアメリカの関係は、キャンプ・デービッド合意以来、強い信頼関係に結ばれてきたのだが、今回の第二革命について、アメリカは一部の人物たちのものだ、と認識している節がある。
アメリカにとってエジプトは、中東地域の要の国家だというのが、アムル・ムーサ氏を始めとする、エジプトの要人たちの理解であり、アメリカがエジプトとの関係を失えば、大きなマイナスが及ぶと考えている。
その最も分かりやすい例は、スエズ運河の航行問題だ。現在の時点では、アメリカの艦船は優先的に、スエズ運河を航行できているが、関係が悪化すればそうはいかなくなろう。
そうなれば、地中海を拠点とするアメリカの第5艦隊は、インド洋側に自由に航行できなくなり、ペルシャ湾岸に配備されているアメリカ軍の能力は、大幅に下がるということだ。
同時に、アメリカがエジプトとの関係を悪化させれば、エジプトとイスラエルとの関係も悪化することになる。そのことによって、アメリカの被る負担は激増しよう。イスラエルが軍事援助や経済援助の増額を希望してくるからだ。
アムル・ムーサ氏は湾岸のサウジアラビア、クウエイト、アラブ首長国連邦などを称賛しながら、アメリカに苦言を述べたということであろう。しかし、その裏にはアメリカの配慮もあったと考えるのが正しいのではないか。
湾岸3国が独自の判断に基づいて、エジプトを支援を決定したとは思えないからだ。当然これら3国の間で相談がなされたろうし、アメリカの意向も打診しているはずだ。露骨な表現をすれば、これら3国はアメリカの指示に従って、動いたということではないのか。