エジプトは2011年の革命以来、ムスリム同胞団の政党、自由公正党のモルシー大統領の下に統治されてきた。しかし、このモルシー政権は全く革命後のエジプトの問題を解決できなかった。そのため、今年の7月3日には軍が立ち上がり、モルシー政権は打倒された。
以来4ヶ月近い期間が経過したが、現状はどうであろうか。経済問題、雇用問題、治安問題などは進展しているのだろうか。残念ながらそうではないようだ。経済発展はきわめて弱く、問題の解決には足がかりも得ていない。
国家の財政赤字はGDPの、100パーセントに達しているといわれているし、観光業は干上がっている。この観光業は実は最も広域に、仕事をもたらしているのだ。下はこじきから上は観光会社や大臣までが、利益を得ていたのだ。
観光業が弱いということは、治安が悪いためなのだが、若者の失業率が高いことに、起因しているのであろう。若者は不満をイスラム原理主義の形で表すか、犯罪で表すことになる。今年エジプトでは、殺人事件が130パーセント増え、盗難事件は350パーセント増加し、誘拐は145パーセント増加している、という報告がある。
公式なエジプトの失業率は13パーセントだが、実質は30パーセントをはるかに超えているのではないか。特に若者の失業率は、75パーセント近いのではないかと推測されているのだ。
庶民の生活は失業率の高さが直接影響し、相当厳しいもののようだ。1日2ドル以下で生活しているエジプト人が、50パーセントを超えているということだ。それにもかかわらず物価は値上がりし、ますます苦しい状態になっているということだ。
なかでも食料品の値上げが、毎日の生活に直接影響を与えている。ガソリンの値上げもあり、物流がスムーズで無くなっていることも、その原因のひとつであろう。
エジプト政府が最近発表したインフレ率は、今年の6月で10パーセントとなっているが、それを信じるエジプト国民は皆無だろう。庶民は収入の半分を食料品の購入に、充てざるを得ない状態にあるのだ。
このエジプトの窮状を救うには、観光客をエジプトに送り出すことが一番の近道であろう。もちろん、ある程度の危険は伴うかもしれないが、団体旅行で移動する分には、犯罪に遭遇することも、少ないのではないか。警備は軍と警察がしてくれる、ムバ-ラク時代にはそうしていたのだから。