リビアの暫定政府のアリー・ザイダーン首相が誘拐される、という事件が10月10日に首都トリポリで起こった。こうした事件が起こると、アルカーイダと関連する組織によるのではないか、という推測がなされるのだが、どうも今回はそれとは異なるようだ。
アリー・ザイダーン首相は誘拐後、間も無く解放され無事だったが、その犯人について同首相は明らかにしていない。間も無く公表すると言ってはいるが、真犯人については、闇に葬られるかも知れない。
アリー・ザイダーン首相は犯人について、『政府放逐だけが目的だ』と語っているがそれも疑わしい。もしそれが目的なら、拘束されている時間がもっと長かったろうし、犯人側からの要求も出ていたろう。
アリー・ザイダーン首相は釈放後に、報道陣が質問した犯人の組織と、アンサール・シャリーア組織との、関係についても否定している。
結果的に、この誘拐事件はイスラム過激派によるものではなく、リビアの国内の権益争いに、端を発しているのではないか、という説が有力になってきている。
ご存知の通り、リビア国内には部族、思想、宗教などで、集団を結成されている幾つもの組織があり、それが政治の主導権争いをしているのだ。
このアリー・ザイダーン首相誘拐事件について、信頼できそうな推測意見が出てきた。それはリビアのムスリム同胞団の幹部が語ったもので、『この誘拐事件はアリー・ザイダーン首相が、政府批判を軽減するために行ったものであった。』というものだ。
アリー・ザイダーン首相の誘拐事件を工作し、結果的に彼に対するリビア国民の同情を集めようとした、ということのようだ。真実はいまだに明らかになっていないが、多分にありうる話であろう。