国連会議でアメリカを訪問した、イランのロウハーニ大統領とアメリカのオバマ大統領との、直接的な会談は行われなかった。そのことでほっと胸をなでおろしたのは、イスラエルのネタニヤフ首相であったろう。
しかし、事態はそれでは済まなかった。ロウハーニ大統領が帰途に着き、空港に向かう車の中で電話が鳴った。それはオバマ大統領からのものであった。つまり、オバマ大統領はロウハーニ大統領に『電話を掛ける』という行為で全てのメッセージを伝えたということだ。
アメリカのオバマ大統領は今後、イランとの関係改善に、本格的に動き出す、というメッセージを送ったということだ。
そればかりではなかった。シリアのバッシャール・アサド大統領についても、オバマ大統領はバッシャール・アサド大統領に対して、個人的な非難の言葉を一切口にしなかったということだ。彼は『シリアから化学兵器を取り除くべきだ』と発言したに過ぎなかった。
この二つのことは、イスラエルのネタニヤフ首相を、相当不安に落とし入れていると思われる。既にご報告した透り、イランに対する軍事攻撃について、アメリカは関心を示さないことから、ネタニヤフ首相は『単独攻撃』を口にしたが、そのようなことは出来まい。
シリアについては、アメリカ側が反政府のFSAに対し、既にヨルダンで軍事訓練をしている、という情報がある。あまりにもひどい反政府側の、外人ジハーデストの行動に、FSAは反発し始めたことが、原因ではないか。
そして、FSAは6ヶ月ほど前から、秘密裏にシリア軍との協議を重ねているということだ。そうなると今後、アメリカ政府はFSAを訓練し、他のジハーデスト排除に動く可能性があることから、シリア軍に有利に働こう。これはイスラエルにとっては、歓迎できない展開ではないのか。
イランとの関係でも、アメリカが今後イランとの関係を、改善していくとなれば、イスラエルは完全に世界の潮流から、外されることになろう。ネタニヤフ首相はロウハーニ大統領を『羊の皮をかむった狼だ』と評したが、その言葉は全く世界に対して、説得力を持つまい。
そのような中で、ネタニヤフ首相はロウハーニ大統領との、直接対話意思のあることを口にした。理詰めで話し合い、ロウハーニ大統領をやり込めようという戦略であろうか。それはなんの価値も無い徒労と思えるのだが。ネタニヤフ首相はそれだけ、冷静に考えられないほど、余裕がなくなってきているのではないか。