『ネタニヤフの焦りかイラン単独攻撃意思』

2013年10月 2日

 イスラエルのネタニヤフ首相がイランに対し、場合によっては単独でも軍事攻撃を加えると言い出した。それは何を意味しているのだろうか。単なる強気の発言か、あるいはイランに対する恫喝であろうか。

 イランはネタニヤフ首相のこの発言を、せせら笑っているのではないだろうか。人口がイスラエルの10倍以上あり、国土面積の広いイランにしてみれば、たとえイスラエルが軍事攻撃をかけても、最後に勝つのは自分たちだ、と思っているだろう、

 また、自主開発した兵器はイランからイスラエルの中心部まで届く、長距離ミサイルなど何種類もある。それらの兵器を使って反撃すれば、イスラエルは相当のダメージを受けることになろう。

 加えて、イランの強みはレバノンのヘズブラや、シリアという味方がイスラエルを取り囲んでいることだ。そのこともイランのイスラエル攻撃を、有利にしていよう。すでに明かされているように、シリアには相当数のイラン軍人が居住しているし、ヘズブラの中にも入っているはずだ。

 こうした事情を、イスラエルのネタニヤフ首相が知らないはずはない。それにもかかわらずこの強硬発言をしたのは、そうせざるを得なかった事情が、イスラエル側にあるということであろう。

 今回のシリアの化学兵器問題をめぐる国連総会の折に、イランとアメリカの接近が大きな話題となり、イランのロウハーニ大統領がアメリカを離れる車の中で、オバマ大統領から電話を受け、20分ほど話し合っている。

 そのなかから、オバマ大統領とロウハーニ大統領との間で、イランの核問題に関する平和的な問題解決が語られたことが、明かされている。つまり、少なくとも両国はイランの核問題の解決について、相当前向きな姿勢を示したということであり、いままでのような緊張関係には、向かわないということだ。

 シリアの問題でもイスラエルが期待していたような、アメリカによる空爆は当分先送りになり、ロシアの提案した国際関与と、化学兵器の撤廃という選択肢が前進している。

 つまり、イスラエルはこれまで同国を守り続けてきてくれていた、アメリカという巨像の庇護を失うであろうことを、実感し始めたのではないか。そうなればイスラエルは自力で、自国を守らなければならなくなるということであり、今回のネタニヤフ首相の発言はその焦りから出たものではないのか。

訪米中のネタニヤフ首相は、バイデン副大統領やケリー国務長官と2時間にも及ぶ話し合いをしている。そのことはアメリカア側が、ネタニヤフ首相の意向に色よい返事をなかなかしてくれていない、ということでもあろう。