シリアの内戦が続いているが、今までのところいい方向に向けた、目立った進展は無い。国連でのシリア問題討議は、ロシアの優勢でアメリカの軍事攻撃の可能性を遠ざけた。もちろん、アメリカはいまだに種々の条件を付けることにより、今後にシリア攻撃の余地を残している。
そうなると、シリア軍と反政府側の戦闘組織との間で、当分の間戦闘が続くということだ。その結果、シリアの内戦はおのずから周辺諸国に、影響を及ぼしていく危険性が、高まっていくということであろう。
トルコではゲジ公園の再開発が発端で、警察が力で押さえ込んではいるものの、全国的な政府に対する抗議の行動が続いている。それがいつ本格的な動きになるか、予測がつかない。
いままで選挙による投票で、絶対的自信を持っていたエルドアン首相も、実際に選挙をしてみた場合、どのような結果が出るのか分からないのではないか。エルドアン首相の強引な行政手法が、次第に国民の間で反発を広げているのだ。
エルドアン首相がどう考えているかは別にして、トルコはいま極めて危険な方向に、向かっているのではないかと思われる。以前にも書いたように、クルド人がトルコとシリア、イラクにまたがって、居住していることに問題がある。
それらのいずれかの地域で問題が発生すれば、トルコ国内のクルド人にも影響が及んでくる、危険性があるのだ。現実に最近では、トルコ・シリア国境地帯で、クルドとアルカーイダ系のヌスラ組織とが、戦闘を展開している。それが戦場をシリアからトルコに、拡大してくる可能性は否定できまい。
同じようなことが、ヨルダンとシリアとの国境地帯でも、芽生え始めている。シリア軍の攻勢の前に、次第に後退を余儀なくされている反政府派、なかでも、アルカーイダに繋がっているヌスラ組織が、ヨルダン国境で勢力を伸ばし始めている。ヌスラ組織はこの国境地帯地域を、支配しようと考えているようだ。
以前から言われていたことだが、ヨルダンに設けられたシリア人難民キャンプでは、若い女性は臨時婚という合法的な売春の対象とされ、少年を含む若い男性たちは、戦闘員としてスカウトされているのだ。
当然の事として、シリア人難民キャンプには、これらの反政府派のスカウトの手引きをする、シリア人もヨルダン人もいるのだ。武器もまた非合法に相当量が、ヨルダン側に流れ込んでいるものと思われる。
その武器がヨルダン政府に向けられる時が来ない、という保証は何処にもないのだ。そのため、ヨルダン政府とシリアの反政府組織FSA(シリア自由軍)が、必死にその動きを、止めようとしているのだ。