イスラエルの軍幹部が、最近面白い発言をしている。パレスチナのガザ地区を支配しているハマースが、イスラエルの安全上最も好都合な相手だ、と言い出しているのだ。
このイスラエル軍の幹部の発言によれば、ガザのハマースとは、これまで何度も戦闘を展開してきたが、そのためにハマースはイスラエル軍の実力を、良く分かっているというのだ。
結果的に、ハマースはガザ地区からの、イスラエル領内に対するロケット攻撃を、控えるようになったというのだ。つい昨年、イスラエル軍はガザ地区に対する徹底的な軍事攻撃を行い、ハマース側は相当の痛手を被っている。
最近でも、ガザ地区からのロケット攻撃が、絶えたわけではないが、それは弱小のパレスチナ組織が、単発的に行うものであり、対応できる範囲だということのようだ。
ガザ地区のハマースが、イスラエルに対する攻撃を控えているのには、それ以外にも原因がある。それはエジプトのモルシー政権(ムスリム同胞団政権)が打倒されて以後、エジプトはハマースとガザに対する、締め付けを強化している。
ガザ地区とエジプト領のシナイ半島の間に設けられていた、何百本もある密輸用の地下トンネルを、エジプト軍が次々と破壊しているのだ。このため、ガザ地区では生活必需品や、建設資材が大幅に不足するようになった。
こうなると、ハマースはイスラエルに対して、関係を改善しなければ、やっていけなくなるということだ。もし、ハマースがあくまでも強硬な対応を、イスラエルにとり続ければ、エジプトとイスラエルによって、ガザ地区の住民は兵糧攻めに遭う、ということになる。
つまり、ハマースは大分追いつめられており、イスラエルとの間に何らかの妥協をはからなければ、ガザ地区での政治的な主導権を、失うことになるのだ。ガザ地区の住民が不満を抱きながらも、ハマースの主導に従っているのは、外国からの援助獲得と、秘密トンネルを通じての生活物資の確保によるのだ。
ハマースが現在の主導的地位を失い、ガザ地区でイスラム原理主義の強硬派が、主導権を握るようなことになれば、イスラエルはガザ対応にてこずることになる。だからと言って、ファタハがガザ地区で主導権を握れるかといえば、それも現状ではあり得ないことなのだ。
支配には『生かさず殺さず』という言葉があるが、イスラエルはまさに今、ハマースに対し『生かさず殺さず』の対応を、するということであろう。