『アメリカの性急なシリアへの要求』

2013年9月21日

 

 アメリカはロシアが提案した、シリアの化学兵器処理問題に対し、何の対応もせずに、拒否することは出来なかった。当然であろう。それはロシアの提案がまともだからだ。世界の多くの国々がロシアの提案に賛成したなかで、アメリカが強引にそれを拒めば、アメリカの孤立は深まることになるからだ。

 しかし、だからといってアメリカは、すんなりとロシアの提案を、受け入れたわけではない。アメリカが打ったロシアの提案への対抗策は、国連を通してのもののようであり、実質的にロシアの提案が不可能になることを、狙ったもののようだ。

 曰く

:シリアは1週間以内にすべての化学兵器のリストを整える。

11月には国際査察団がシリアに入る。

11月末前に国際査察団は最終的な調査結果をまとめる。

11月末までにすべての化学兵器混合施設、充填施設を破壊する

:来年半ばまでにすべての化学兵器材料、関連機器を破壊する。

 

 こうしたことが実際に可能なのであろうか。シリア政府側は化学兵器の処理には、1億ドルの費用と1年の歳月が必要だと述べているが、それは時間稼ぎではなかろう。

 ロシアが提案したことに、現段階でシリアが逆らうとは、思えないからだ。既にシリアの反体制側は、シリア政府が化学兵器をイラクやレバノンに、移送していると言い始め、あたかもシリア政府が化学兵器を、今後も持ち続ける意向であるように非難しているが、それは事実とは違うのではないか。

 この反体制側の主張は、アメリカが考えるシリアの化学兵器に関する、今後の方針を支持するためのものではないのか。

 こうしたシリアの反体制側の動きは、既にシリア国民の立場を、離れているのではないのか。シリア政府とは絶対に妥協しない。あくまでもアサド体制の打倒しか考えないということは、そのためならば、どれだけの犠牲がシリア国民に及んでも構わない、ということではないか。

 シリア国民のために始まったであろう、反体制運動は武器を手にし、多数の犠牲者を生み出し、何百万人もの難民を生み出している。多くの家屋が破壊された後に、もしアサド体制が打倒されたとしても、その後のシリア再建には何年も何十年もの歳月がかかろう。もちろん多くの犠牲者の遺族たちと、重傷を負った者たちの今後の人生は、苦難そのものであろう。