『シーシが次期大統領でーす、という乗りのエジプト』

2013年9月20日

 73日に起こった軍の介入以後、一時期エジプトは打倒されたムスリム同胞団側と、軍や警察の間の戦いで、騒乱状態に近かった。エジプト各地では銃器を使った、闘いが展開されもした。

 しかし、時間が経過すると新政府が断行した、ムスリム同胞団組織や幹部の銀行口座が凍結されたために、ムスリム同胞団側は一般人をデモに駆り出す、資金が枯渇していった。

すでに、欧米の旅行会社は団体旅行を、エジプトに送り始めているのだから。もちろん、こうした変化はエジプト人にとって、何よりも嬉しいことだ、ドイツのトーマス・クック社が、団体旅行客を送り込んだニュースが、写真入りでエジプトの各種マスコミに紹介されていた。

 つまり、エジプトの国内はほぼ安定してきている、ということだ。国内が安定すると外人観光客が増えることにつながり、それは非常にすそ野の広い業種であるために、多くの国民が潤うということになる。

 エジプトの国内状況が、73日の変革から1~2カ月で安定したのは、述べるまでもなく軍と警察の、活躍によるというとだ。なかでもシーシ国防大臣の不退転の対応は、ムスリム同胞団側あいまいな希望を、抱かせなかった。

 このまま推移すれば、エジプトは完全に復活の波に乗れるわけだが、そこで問題になるのは、近く実施される大統領選挙に、誰が立候補するかということだ。いまの段階ではあまり明らかではないが、何人かのめぼしい人物の名が、話題に上り始めている。

 アムル・ムーサ元アラブ連盟事務総長、シャフィーク元首相、サッバーヒ野党党首、エルバラダイ元IAEA事務局長、、、そしてシーシ国防大臣だ。

 アムル・ムーサ氏は高齢であり、再度大統領選挙に挑戦するとは思えない。もし立候補するとすれば、それは体制内部の特別な事情によるものであり、常識的にはあり得まい。

 シャフィーク元首相はすでに、シーシ国防大臣が次期大統領に、就任することを推薦しており、自身は立候補しないようだ。あるいはそのことによって、副大統領なり首相の座を、狙っているのかもしれない。

 サッバーヒ氏は若者向けであり、革命運動の中核の一人であったが、シーシ国防大臣が立候補した場合には、全く歯が立たず、勝ち目がないことを、現段階からわかっているようだ。したがって、彼の大統領選挙に関する発言は、弱腰なものになっている。

 IAEA事務総長だったエルバラダイ氏は、いまでもエジプトの大統領に、就任したいと考えているだろうが、エジプト国民の間では、完全に信用を失っているものと思われる。それは、73日に軍が決断の行動に移る前に、副大統領の座から降りたためだ。

彼のその行動は、敵前逃亡であり卑怯者でしかなかった。 もう誰もエルバラダイ氏をエジプトの大統領に担ぎ出そうとは考えていないだろう。

シーシ国防大臣の人気は、これらの予想される立候補者とは違い、盤石なようだ。シーシ国防大臣はエジプトの社会を、安定と繁栄に導いてくれる、と思っている人たちが相当多いるようで、すでに彼を支持する署名活動が始まり、3000万人の署名を集める、目標を立てているということだ。

街中ではエジプトで有名なファーストフードの店が『シーシ・サンド』を売り出しているし、クッキー・メーカーが出した『シーシ・クッキー』というのも出回り、結構な人気のようだ。

 もちろん、シーシ国防大臣は自分の腹のうちを、明かしてはいない。沈黙していても大統領のポジションが、自分に転がり込んでくる、と予想しているからであろう。