中東世界は混迷の度を、ますます濃くしているというのが実情であろう。以前知合いの人から『エジプトはこれから大変ですね?』という電話を受けたことがあるが、私は『これから良くなります』と答えた。
今その問い合わせをした人は、自分の考えが正しかったと思っているに違いない。しかし、それは正しくないのだ。ある状況から次の状況に変化するためには、一旦厳しい状況を突破し、抜け出さなければならないのだ。その段階なしには、次の段階には行けないのだ。
エジプトはいま、大分ムスリム同胞団が扇動する、混乱が収まりかけてきている。反政府デモも参加者の数が、激減しているということだし、過激テロも相当抑え込まれるようになってきているのではないか。
今のエジプト国民の最大の関心事は、すでに現政府とムスリム同胞団との、暴力衝突ではなく、次期大統領に誰が立候補し、誰が当選し就任するのか、ということに移っているようだ
トルコとその周辺のクルド人の間でも、状況は激しく変化している。トルコ政府が取った硬軟の、クルド組織PKKへの対応は、結果的にPKKのリーダであるオジャラン氏の、妥協を引き出すことに成功した。
以来、トルコのPKK メンバーは、妥協路線に向かい始めたが、何度かは再度抵抗の意思を示す行動をとった。しかし、次第に自分たちが置かれている立場を、理解するようになってきているのではないか。
最も頼りになるイラクのクルド自治政府は、次第にイラク中央政府の圧力を受けるようになっているし、欧米の支援も難しくなってきている。それらの圧力の前には、これまでのようなトルコ一辺倒の立場も、採り難くなっているのではないのか。
シリア国内のクルド人たちも、最初の段階ではシリアの中で、分離独立したクルド地域を創設し、イラクのクルドと一体となって、クルドの国家を創設するような夢を、描いていたろう。
しかし、ここにきてシリアで活動する、過激なスンニー派テロリスト集団は、クルド人を敵視し始め、攻撃を強化するようになっている。ヌスラと呼ばれるアルカーイダにつながる組織は、現在では完全にクルドを敵視し、攻撃のターゲットにしている。
こうなってくると、シリアのクルドもイラクのクルドもトルコのクルドも、結局のところトルコに、頼らざるを得なくなるのではないのか。その場合、トルコには何ができ、何をその代償に、クルドに要求するのだろうか興味深い。